今日の診療
内科診断学

胸痛および胸部圧迫感
田澤 立之


胸痛および胸部圧迫感とは

■定義

 胸部に感じられる,漠然とした不快感から,圧迫感,痛み,激痛まで幅広い症状を含めて,胸痛(chest pain)および胸部圧迫感(chest oppression)についてここでは考える.教科書によっては本項に含めて論じられることもある胸やけ,動悸,呼吸困難などの症状については別項で扱う.

 時間的な経過と部位が鑑別診断に役立つ.時間経過については,①急性(数十分〜数時間前から),②亜急性(数日前から持続性),③反復性・慢性の胸痛に分けてとらえるとよい.部位については,胸骨裏,左あるいは右の一側性に分けて考える.

 胸部には痛みの発生源となるさまざまな臓器がある.臓器別に疾患を整理することは,鑑別診断を想起する手がかりになる.

 一般外来できわめて多い訴えの1つであり,軽症例も少なくないが,なかには即座に診断をつけて処置をしなければならない疾患や悪性疾患もありうるので,まずその見極めをすることが大切である.

■患者の訴え方

 胸痛として分類される訴えは,重篤な痛みから軽い不快感までさまざまであり,時間経過も多様である.以下に例示する.

①「2か月くらい前から,朝の散歩をするときに,なんとなく押さえつけられるような重苦しい感じがあって,少し休むとよくなります」

②「3日前から熱が出て,右の胸が痛みます.特に咳をしたり息を大きく吸い込むと,ズキンと痛みが走ります」

③「夜寝ていたら急に胸が灼けるように痛くなって,冷や汗が出て悪心があり,家族に救急車を呼んでもらい,ここへ来ました.まだ痛みは続いています」

④「4,5日前から,胸の左側に痛みが出てずっと続いています.体をひねってもよく見えないのですが,何か,湿疹みたいなものがあると家族に言われました」

⑤「午前中,大学で講義を受けていたら,急に右の胸が痛くなりました.ちょっと息切れもあるみたいです」

⑥「夜の11時頃テレビ

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?