今日の診療
内科診断学

感覚障害
山下 一也
小林 祥泰


感覚障害とは

■定義

 感覚とは,外界からの刺激または体内状況の変化を感じ取り,それを認知する働きをいう.感覚には表在感覚として触覚,痛覚,温度覚があり,深部感覚として振動覚,関節位置覚,複合感覚(皮質感覚)として2点識別覚,立体覚がある.感覚神経の上行路は,図3-307に示すように,温痛覚と深部・固有感覚神経路とは違う経路がある.

 感覚障害(sensory disturbance)とは,これらの経路のいずれかの障害をいう.感覚の種類別により走行経路が異なっているため,温痛覚障害が強く,触覚ないし深部覚障害は軽微あるいはみられない場合がある(解離性感覚障害).

■患者の訴え方

 感覚障害は患者の主観によって表現されるので,客観的評価が難しい面がある.

 患者は「しびれ」として感覚障害を表現することが最も多い.「しびれ」の内容についても,たとえば「ジンジン」「ピリピリ」「ピリッと走るような」といった具体的な表現を患者から聴取し,記載する.

 与えた刺激を異常と感じるのをパレステジア(paresthesia),刺激がなくても「ジンジン」「ピリピリ」とする自発的な異常感覚をジセステジア(dysesthesia)として区別する.

 疼痛(痛み)の訴えも多い.これは,種々の刺激が末梢神経終末から脳へ伝えられるときに起こる異常感覚である.

■患者が感覚障害を訴える頻度

 末梢神経障害での原因としては手根管症候群や頸椎症などが多く,中枢性の原因としては圧倒的に脳血管障害が多い.脳血管障害では,視床,内包の障害が多く,頭頂葉皮質障害や脳幹障害がこれに続く.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

(図3-308),(表3-319)

 感覚障害の種類としては,感覚過敏,感覚低下・感覚脱失,異常感覚,疼痛(痛み)がある.

 感覚過敏とは,たとえば針刺激を与えた場合に,それから予想されるよりもさらに強い痛みを生じる場合を

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