今日の診療
内科診断学

ショック
大和 眞史


ショックとは

■定義

 ショック(shock)とは,急激で全身的な組織血液灌流低下によって組織が低酸素状態に陥り,細胞代謝が障害された状態である.結果として,重要臓器の機能低下やアシドーシスによる諸症状が出現する.早期に適切な治療を行わないと悪循環に陥って,不可逆的な重要臓器不全が起こって死亡する.

■患者の訴え方

 ショックに遭遇する状況は,たとえば以下のようなものである.

●外傷や胸痛を主訴に救急車で運ばれた患者が蒼白で脈が触れない.

●造影CT検査中に体の違和感を訴え,発疹が出始めた患者が急速に不穏状態になった.

●イレウス術後に腹膜炎を併発し,発熱が続いていた患者が乏尿・低血圧が続くようになった.

こうした場合,血圧値のみにとらわれずに,意識障害や乏尿などの組織灌流の低下状態の有無を評価し,必要に応じて早めに治療を始めないと,急速に重篤な状態に陥る可能性が高い.

■ショックの頻度

 急性心筋梗塞で心原性ショックを呈する頻度は,入院の時期や初期治療によって異なるが,5〜15%で,再灌流療法が遅延した場合には致命率が70〜95%に達する.

 造影剤を使用する放射線検査(CTや血管造影など)では,非イオン性造影剤の場合で,重篤なヨードアレルギーをきたす頻度は0.04%,ショックに至る頻度は0.01%である.その約70%は造影剤注入中か注入後5分以内に生じている.

 局所麻酔薬による薬物アレルギーによってショックを呈する頻度は0.05%である.

 今日,感染性(敗血症性)ショックに至る患者の多くは免疫不全患者(compromised host)である.高齢者,血液悪性腫瘍や肺癌など固形腫瘍,慢性気管支炎などの慢性呼吸器疾患,大きな侵襲を伴う外科手術後などを基礎疾患として有していることが多い.これらの患者で敗血症からショックに至った場合は致命率がきわめて高い.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

(図3-3

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?