今日の診療
内科診断学

甲状腺機能亢進症
飯高 誠


甲状腺機能亢進症とは

■定義

 甲状腺機能亢進症(hyperthyroidism)は,甲状腺からのホルモン産生および分泌が持続的に亢進し甲状腺中毒症状をきたす病態である.血中甲状腺ホルモンが増加する甲状腺中毒症(thyrotoxicosis)の一部である.

■患者の訴え方

 「疲れがひどい」「少し動いただけで動悸がする」「階段で息切れする」「手がふるえる」「汗をよくかくようになった」「お腹が減って食べているのにやせてきた」などの愁訴が多い.

 一部の患者では,家人などに「のどが腫れている」「目が出てきた」「顔つきが変わった」などの指摘を受けて受診することもある.

 甲状腺ホルモンがどの程度過剰になるかで症状の強弱はあるが,不定愁訴的な全身症状と同時に,各臓器症状として訴えることが多い.特に循環器症状を訴えることが多く,循環器疾患と間違われることもある.

 全身症状としては,体重減少,多汗,易疲労感,暑がり,微熱,月経不順,無月経などがある.

 循環器症状としては,動悸,頻脈,労作時息切れ,不整脈などがあり,神経筋症状として,手指振戦,いらいら,多動,不眠,情緒不安定,筋力低下,四肢麻痺などがある.消化器症状としては,食欲亢進,下痢,軟便などである.

■患者が甲状腺機能亢進症を訴える頻度

 住民健診などで見つかる甲状腺機能亢進症は,1,000人に対し1〜6人と報告されている.同様に,外来を受診する一般患者のうち,甲状腺中毒症を有する人は約0.5%程度存在する.しかし,なんらかの甲状腺の異常を認めて甲状腺専門外来を受診する甲状腺疾患患者のうちでは,甲状腺機能亢進症であった人は,30〜40%に達する.甲状腺中毒症をきたす疾患のなかではBasedow(バセドウ)病〔Graves(グレーブス)病ともいわれる〕が圧倒的に多いが,他疾患による甲状腺中毒症もあることを忘れてはならない.

症候から原因疾患へ

■病態

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