今日の診療
内科診断学

口腔内びらんが繰り返し出現した難治性口内炎
42歳 男性
横関 博雄


現病歴:半年前から歯肉のびらんを自覚していた.歯科医院を受診したところ,歯肉炎と言われ,うがい薬が処方された.しかし,症状は軽快せず,頰粘膜にまで拡大してきた(図4-1a,b).数週間前から腋窩,鼠径部などの間擦部にも紅斑,水疱ができるようになってきた(図4-2).発熱などの全身症状はなく,内服薬もない.

既往歴:特記すべきことなし.

家族歴:特記すべきことなし.

身体所見:意識は清明.身長172cm,体重64kg,脈拍82回/分,血圧134/80mmHg,呼吸数18回/分,体温36.8℃.リンパ節腫脹なし.

皮膚所見:頰粘膜,口唇に半米粒大から小豆大の類円形のびらんが多数散在.一部融合して母指頭大のびらん局面がある(図4-1a,b).腋窩,鼠径部などにも小豆大までのびらんが十数個集簇.びらんは紅暈を伴う(図4-2)

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

Stevens-Johnson症候群

中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis)

尋常性天疱瘡

水疱性類天疱瘡

腫瘍随伴性天疱瘡

落葉性天疱瘡

全身性エリトマトーデス

頻度の高い疾患

アフタ性口内炎

口唇ヘルペス

水痘

ヘルパンギーナ

突発性発疹

伝染性単核球症

後天性免疫不全症候群(AIDS)

口腔内カンジダ症

Bednarアフタ

Behçet病

扁平苔

伝染性膿痂疹

多形紅斑

白板症

■この時点で何を考えるか?

 医療面接と身体診察を総合して考える点

 口腔内の難治性びらんを訴えて受診した患者に対しては,経過が長いのかそれとも急速に広がってきているのか,また,体に水疱,びらんが出てきていないのか口腔内だけなのか,眼瞼など他の粘膜にも出てきていないのかを確認する必要がある〔症候・病態編「皮膚の異常」参照〕.〈p〉発熱などの全身症状を伴い急速に口唇,口腔内のびらんが出現,眼瞼,陰部などにも拡大して

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?