現病歴:半年前から歯肉のびらんを自覚していた.歯科医院を受診したところ,歯肉炎と言われ,うがい薬が処方された.しかし,症状は軽快せず,頰粘膜にまで拡大してきた(図4-1a,b)図.数週間前から腋窩,鼠径部などの間擦部にも紅斑,水疱ができるようになってきた(図4-2)図.発熱などの全身症状はなく,内服薬もない.
既往歴:特記すべきことなし.
家族歴:特記すべきことなし.
身体所見:意識は清明.身長172cm,体重64kg,脈拍82回/分,血圧134/80mmHg,呼吸数18回/分,体温36.8℃.リンパ節腫脹なし.
皮膚所見:頰粘膜,口唇に半米粒大から小豆大の類円形のびらんが多数散在.一部融合して母指頭大のびらん局面がある(図4-1a,b)図.腋窩,鼠径部などにも小豆大までのびらんが十数個集簇.びらんは紅暈を伴う(図4-2)図.
診断の進め方
特に見逃してはいけない疾患
・Stevens-Johnson症候群
・中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis)
・尋常性天疱瘡
・水疱性類天疱瘡
・腫瘍随伴性天疱瘡
・落葉性天疱瘡
・全身性エリトマトーデス
頻度の高い疾患
・アフタ性口内炎
・口唇ヘルペス
・水痘
・ヘルパンギーナ
・突発性発疹
・伝染性単核球症
・後天性免疫不全症候群(AIDS)
・口腔内カンジダ症
・Bednarアフタ
・Behçet病
・扁平苔
・伝染性膿痂疹
・多形紅斑
・白板症
■この時点で何を考えるか?
医療面接と身体診察を総合して考える点
口腔内の難治性びらんを訴えて受診した患者に対しては,経過が長いのかそれとも急速に広がってきているのか,また,体に水疱,びらんが出てきていないのか口腔内だけなのか,眼瞼など他の粘膜にも出てきていないのかを確認する必要がある〔症候・病態編「皮膚の異常」参照→〕.〈p〉発熱などの全身症状を伴い急速に口唇,口腔内のびらんが出現,眼瞼,陰部などにも拡大して
関連リンク
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