今日の診療
内科診断学

歩くと起こるめまい
55歳 女性
石川 欽也


現病歴:主婦.1か月ほど前から歩くとめまいがするようになった.また,夫と散歩をしていて「まっすぐ歩いていない」と言われた.このため,近くの医院を受診した.

既往歴:生来健康.

身体所見:意識は清明.身長160cm,体重58kg,体温36.2℃,脈拍72回/分(整),血圧120/72mmHg,呼吸数14回/分.呼吸音清明,心音も正常.眼振がみられた.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

中枢性めまい

脳梗塞

脳出血

脳炎(小脳炎を含む),髄膜炎

脳腫瘍(特に小脳・脳幹部)

てんかん

中毒(フェニトイン,アルコールなど)

多発性硬化症

脊髄小脳変性症

失神性めまい

心不全や徐脈などの心疾患

貧血,脱水,降圧薬などの循環障害

起立性低血圧

 ・Shy-Drager症候群(多系統萎縮症)

 ・Parkinson病(Lewy小体病)

 ・自律神経ニューロパシー(糖尿病,アミロイドーシス,特発性)

末梢性めまい

良性発作性頭位変換性めまい

Ménière病

突発性難聴

前庭神経炎

内耳炎

薬物性前庭神経障害(アミノグリコシド,シスプラチンなど)

鼓膜損傷などの外傷

その他

心因性

視覚性

頸性

感覚性(脊髄後索障害や多発性神経炎)など

頻度の高い疾患

末梢性めまい(40〜50%)

頭位変換性めまい

Ménière病

突発性難聴

前庭神経炎

中枢性めまい(約30%)

脳血管障害

聴神経鞘腫

失神性めまい

■この時点で何を考えるか?

 医療面接と身体診察を総合して考える点

 患者の訴える「めまい」がどういう性質(表4-4)かを医療面接で確認することが非常に重要である(表4-5)〔症候・病態編「めまい」参照〕.

 この患者の最初の訴えでは回転性めまいの訴えではないが,〈p〉改めて医師が質問して「天井が回転するようなめまい」かどうかを確認する.同様に,〈p〉浮動性めまいと失神性めまいについても尋ねる.その結果,本

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