現病歴:1か月前に両側頸部と左鎖骨上のリンパ節が腫れているのに気がついた.痛みや発熱はないが,徐々に大きくなってきたため,受診した.
既往歴:特記すべきことはない.
身体所見:身長152cm,体重51kg,体温36.3℃,脈拍68回/分(整),血圧110/64mmHg,呼吸数18回/分.眼瞼結膜に貧血はなく,眼球結膜に黄染はない.口蓋扁桃の腫脹はない.両側頸部と左鎖骨上窩に約2cmのリンパ節を計3個触知する.腫大リンパ節に圧痛はなく弾性硬で可動性がある.心音と呼吸音に異常はなく肝・脾を触れない.浮腫なし.皮疹なし.
診断の進め方
特に見逃してはいけない疾患
・悪性リンパ腫
・癌のリンパ節転移
頻度の高い疾患
・ウイルス性リンパ節炎
・細菌性リンパ節炎
■この時点で何を考えるか?
医療面接と身体診察を総合して考える点
リンパ節は感染症,腫瘍,その他の疾患(膠原病やサルコイドーシスなど)で腫脹する.このうち,感染症によるものが多く,なかでもウイルス感染症が多い〔症候・病態編「リンパ節腫脹」参照→〕.
ライノウイルスやコロナウイルスなどによるかぜ症候群,インフルエンザ,風疹や麻疹などの皮疹を伴うウイルス感染症などでリンパ節は腫脹し,随伴する症状や所見によって診断される.EBウイルスの初感染である伝染性単核球症は後頸部リンパ節腫脹が著しく,咽頭痛や扁桃の白苔を伴う.サイトメガロウイルスやヒト免疫不全ウイルス(HIV)の初感染時にも伝染性単核球症に類似した症候を呈することがある.
細菌感染症では溶血性連鎖球菌性咽頭炎・扁桃炎,う歯や歯周炎によって頸部リンパ節が,ネコひっかき病では腋窩リンパ節が有痛性に腫脹する.梅毒では鼠径リンパ節が無痛性に腫脹する.結核性リンパ節炎ではリンパ節が相互に癒着して腺塊を形成し,皮膚に瘻孔を形成することがある.これら以外の感染症として,つつが虫病やトキソプラズマ症がある.
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