今日の診療
内科診断学

立ち上がった際に自覚した胸痛
79歳 女性
水野 篤


現病歴:2日前,夜間に台所に立ち上がった際に胸痛を自覚した.それ以降,動くたびに胸痛を感じていたため,座ってゆっくり過ごしていた.本日,病院受診しようと歩いたときに呼吸困難が出現し,タクシーで救急外来を受診した.

身体所見:身長163cm,体重69.5kg,体温35.7℃,脈拍67回/分(整),血圧96/61mmHg,呼吸数16回/分,SpO2 85%(室内気).眼瞼結膜に貧血所見は認めない.肺野では呼吸音清明,Ⅱ音分裂,Ⅲ音を聴取する.下腿浮腫は軽度.

既往歴:十数年前から高血圧症.十数年前から脂質異常症.脳梗塞を3年前に発症したが,後遺症はなし.

内服薬:ニフェジピン,アスピリン,バルサルタン,フェノフィブラート,ビソプロロール,ゾルピデム.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

急性冠症候群(不安定狭心症,心筋梗塞)

肺血栓塞栓症

緊張性気胸

解離性大動脈瘤

Boerhaave症候群

頻度の高い疾患

食道炎

肺炎

胸膜炎

急性冠症候群(不安定狭心症,心筋梗塞)

肺塞栓

気胸

貧血

心因性呼吸困難・胸痛

■この時点で何を考えるか?

 医療面接と身体診察を総合して考える点

 今回の患者においては,胸部不快感(胸痛および胸部圧迫感)と呼吸困難という2つの症候から鑑別していく.

 胸部不快感・胸痛に関して,〈p〉立ち上がった際の胸部不快感ということで,典型的には深部静脈血栓症からの肺塞栓というエピソードが疑われる.しかし,労作という意味から考えれば,もちろん急性大動脈解離急性冠症候群も重要な鑑別疾患となる.その後,動くたびの胸痛という点からはなかなか直接的に疾患名を想起しにくいが,労作性に起こることから,やはり急性冠症候群のような虚血性疾患も疑われる〔症候・病態編「胸痛および胸部圧迫感」参照〕.

 呼吸困難の観点からはさまざまな機序が考えられるが,肺疾患,貧血,心因性の

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