今日の診療
内科診断学

労作時呼吸困難
63歳 男性
仁多 寅彦


現病歴:50歳頃から咳や痰が多いことを自覚していた.数年ほど前から地下鉄の階段を昇る際に呼吸困難を自覚していたが,年齢による影響と考えていた.1年ほど前から友人たちとの旅行で上り坂を歩いたときや,妻と散歩しているときに,呼吸困難のため自分だけ遅れることが気になるようになった.呼吸困難についての精査を希望し受診した.

既往歴:特記事項なし.健康診断は60歳以降受けていない.

生活歴:22〜60歳まで建築会社勤務,現在は無職.喫煙歴は20〜55歳は40本/日,55歳〜現在は20本/日.飲酒歴はビール350mLを週3回程度.

家族歴:父親が肺癌で死亡.

身体所見:意識は清明.身長173cm,体重50kg,体温36.5℃,脈拍102回/分(整),血圧132/80mmHg,呼吸数20回/分,SpO2 94%(室内気).頸部リンパ節を触知しない.両側の胸鎖乳突筋・斜角筋の肥厚あり,吸気時に鎖骨上窩の軽度の陥没を認める.心音には異常を認めないが,呼吸音が減弱している.呼気延長がある.腹部は平坦・軟で肝・脾を触知しない.下肢に浮腫なし.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

心不全

慢性肺血栓塞栓症

肺癌

悪性中皮腫

重症貧血

頻度の高い疾患

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

間質性肺炎

心不全

■この時点で何を考えるか?

 医療面接と身体診察を総合して考える点

 呼吸困難で受診した患者に対しては,まず救命処置を要する状態であるかを判断する必要がある.今回の患者は慢性的な経過であり,受診時に救命処置を検討する状態ではない.

 呼吸困難ということから,呼吸器疾患が原因として頭に浮かぶが,〈p〉呼吸不全は換気不全,動脈血酸素化不全,組織への酸素運搬不全,組織での酸素利用の不全のいずれかがあると起こり,いくつかの要因が重なって呼吸困難が顕在化していることもある.そのため,それらを考慮しながら全身評価を行う必要がある.

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