現病歴:1年前から時々血便を繰り返していたが放置していた.今朝の通勤時に血便を認め,倦怠感を自覚したことからその日の昼に外来を受診した.
既往歴:特記すべきことなし,薬物服用なし.
生活歴:22歳より会社勤務,喫煙歴は20本/日を5年間.飲酒歴は機会飲酒.
家族歴:特記すべきことなし.
身体所見:意識は清明.身長170cm,体重55kg,体温36.5℃,脈拍76回/分,血圧112/76mmHg,呼吸数15回/分.眼瞼結膜は軽度貧血.呼吸音清明,心音に異常を認めない.腹部は平坦・軟で,腹部全体に軽度圧痛を認める.直腸診にて痔瘻と鮮血便の付着を認める.
診断の進め方
特に見逃してはいけない疾患
・潰瘍性大腸炎
・Crohn病
・感染性腸炎
・Meckel憩室
頻度の高い疾患
・痔
・大腸憩室
・虚血性腸炎
・大腸ポリープ
・大腸癌
・薬物起因性腸炎
■この時点で何を考えるか?
医療面接と身体診察を総合して考える点
下血で受診した患者に対しては,まず緊急処置を要するか判断する必要があり,出血性ショックの危険性を評価する.バイタルサインとともに眼瞼結膜の貧血の程度,直腸診による顕出血の有無を確認する〔症候・病態編「下血・血便」参照→〕.ショック状態ではないことを確認したうえで,循環血液量を確保しつつ,医療面接,身体診察,検査を進めていく.〈p〉この患者においてはショックバイタルではなく,直腸診でも血便が付着する程度のため,活動性の大量出血は現在起きていないと判断した.
まず,直腸診で付着した便の色調から出血部位を推定する.今回の患者では鮮血のため下部消化管出血を考え,血便の既往,頻度,腹痛などから随伴症状の有無,発症前の排便の状態,食事内容を聴取し,原因疾患を絞り込む.
〈除〉この患者においては発症は急激ではなく,腹痛,下痢,発熱などを伴わないことから,感染性腸炎および虚血性腸炎は否定的である.〈除〉薬物服用歴もな