今日の診療
内科診断学

突然に発症した腰背部痛
55歳 男性
土屋 輝一郎


現病歴:昨晩,会社の歓迎会があった.今朝の起床時に左側腰背部痛を自覚し,通勤途中に悪心も出現したため来院した.

既往歴:特記すべきことなし.

生活歴:22歳より会社勤務,喫煙歴なし,飲酒歴は3合/日を35年間.

家族歴:特記すべきことなし.

身体所見:意識は清明.身長174cm,体重89kg,体温37.5℃,脈拍86回/分,血圧132/66mmHg,呼吸数17回/分.眼球結膜に黄染なし.呼吸音清明.心音に異常を認めない.腹部は平坦・軟で,左側腹背部の自発痛を認める.心窩部に圧痛と反跳痛を認める.肋骨脊柱角(CVA)の叩打痛は認めない.体動時・呼吸時の増悪は認めない.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

大動脈解離

急性膵炎

膵臓癌

胆石

尿管結石

腎盂腎炎

気胸

胸膜炎

頻度の高い疾患

急性腰痛症

脊椎圧迫骨折

椎間板ヘルニア

肋間神経痛

■この時点で何を考えるか?

 医療面接と身体診察を総合して考える点

 腰背部痛は患者自身から患部が見えないことから,症状の表現が難しい.まず診察により患者と疼痛部位を確認することが重要である.背部痛が「胸部か腹部か」,「左側か右側か」を特定し,疾患臓器を推測する.上記に列挙したとおり,疾患は主に骨神経系,循環器系,消化器系,尿路系に大別されるので,それぞれの特徴をふまえて診察していく〔症候・病態編「腰痛」参照,「背部痛」参照〕.

 この患者においては腹背部痛であり,〈除〉背部の圧痛,体動時の変動を認めないことから骨神経系は否定的であり,〈除〉CVA叩打痛を認めないことから尿路系は否定的である.また〈除〉血圧が正常であることから,大動脈解離などの循環器系も可能性は低い〈p〉心窩部の圧痛と反跳痛は限局性の腹膜刺激症状を呈していることから急性腹症を念頭におき〈p〉アルコール多飲歴と前日に飲酒していることから急性膵炎を強く疑う

診断仮説(仮の診断)

アル

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