現病歴:3か月前から両足底に薄膜を1枚貼ったような感じがあり,その後両下肢に違和感が広がっていった.1か月前からは発汗過多と両手のしびれ感が出現した.今月になって両下肢に力が入らなくなり,歩行困難となったため,入院となった.
既往歴:子宮ポリープ摘出術(34歳時).
生活歴:喫煙歴なし,飲酒歴は機会飲酒.
家族歴:父:高血圧,肝炎,母:大腸癌.
身体所見
〈一般身体所見〉身長167cm,体重61kg,体温36.3℃,脈拍72回/分(整),血圧128/76mmHg,呼吸数16回/分.心・肺・腹部所見に特記すべき異常はない.
〈神経学的所見〉意識は清明で高次機能に異常はない.脳神経は正常.四肢筋力は遠位筋優位に低下しており左右差はない.深部反射は消失しているが,病的反射はみられない.四肢の失調はない.手掌・足底にdys-esthesia,hyperalgesia,hyperesthesiaを認める.振動覚・位置覚は正常である.
診断の進め方
特に見逃してはいけない疾患
・糖尿病性ニューロパシー
・癌性ニューロパシー
・傍腫瘍性ニューロパシー
・家族性アミロイドポリニューロパシー
・Fabry病
・POEMS症候群
・薬物性ニューロパシー(タクロリムス薬,インフリキシマブ薬などのTNF-α阻害薬)
・中毒性ニューロパシー(ノルマルヘキサン)
頻度の高い疾患
・Guillain-Barré症候群
・慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)
・血管炎による多発性単神経炎
・Charcot-Marie-Tooth病
■この時点で何を考えるか?
医療面接と身体診察を総合して考える点
神経学的所見をまとめると,①遠位筋優位の筋力低下,②深部反射の消失,③手袋靴下型の感覚障害となる.以上から解剖学的診断は末梢神経と考えられる.
〈p〉末梢神経障害は多発神経炎,単神経炎,多発性単神経炎の3タイプに分けて考えるとよい.〈p〉多発神経炎の
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