診療支援
診断

眼底異常
fundus abnormality
岩佐 憲一
(島根大学医学部附属病院脳神経内科)
長井 篤
(島根大学医学部内科学第三 教授)

眼底異常とは

定義

 眼底異常とは,眼底鏡で見える範囲の眼底を構成する要素の異常所見の総称であり,網膜,網膜動静脈,乳頭の異常に分けられる.全身疾患に伴う所見である場合と,眼球自身の病変である場合があり,ここでは前者を中心に解説する.

患者の訴え方

 患者は,「ものが見えにくい」と訴えるが,それが視力低下であるのか,視野欠損による症状であるのか,病歴や身体所見から判断できるものなのかの区別を要する.多くの場合,症状は一側性であるが,疾患によって両側性の場合があり,中枢性病変では両耳側半盲や同名性半盲になる.また,疾患によっては視力低下を訴えないものもある.

 視力低下は,①角膜疾患,②ぶどう膜疾患,③硝子体疾患,④網膜脈絡膜疾患,⑤視神経疾患,⑥中枢性病変で起こり,①〜⑤については,眼科的な診察,検査,処置が必要である.

患者が眼底異常を訴える頻度

 原因によりその頻度は異なるが,視力低下,視野欠損のみの場合は,眼科に受診することがほとんどである.一般内科では,糖尿病の合併症として網膜病変をきたすものが多い.

 神経疾患のうち眼底異常を認めるものは,頭蓋内圧亢進をきたす病態や多発性硬化症,視神経脊髄炎,膠原病・炎症性疾患に伴う眼底変化であり,後3者は成人に多くみられる.

症候から原因疾患へ

病態の考え方

 図1に視力低下をきたす疾患を原因別に挙げる.また,眼底異常をきたす疾患を表1に示す.

 腫瘍や代謝性疾患,慢性中毒,変性疾患は慢性の経過をとり,炎症性疾患や循環障害は急性の経過をとることが多い.また,全身性疾患の部分症状としては両側性の病変を認めることが多い.

 視野欠損は眼底疾患の部分症状として起こる場合もあるが,多くは視神経以降の中枢性疾患で起こり,この場合,眼底に異常はみられない.

病態・原因疾患の割合

(図2)

 最も頻度が高いのは,網膜動静脈の循環障害であり,網膜剝離を含む網膜変性がこれ

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