診療支援
診断

便秘
constipation
浅香 正博
(北海道医療大学 学長)

便秘とは

定義

 便秘とは,糞便の腸管内における異常な停滞あるいは通過時間の異常な延長により,排便回数や排便量が減少した状態を指す.同時に糞便が腸管内に停滞するため,水分量の減少が起こり,糞便が硬くなることが多い.

 排便回数や排便量は個人差が大きく,同一人でも食事内容や量によって変動が大きい.このため,便秘を厳密に定義することは難しいが,一般的には排便回数の減少(3〜4日以上排便のないもの),便量の減少(35g/日以下),硬い糞便の排出のいずれかにより,排便に困難を感じた状態と定義することが多い.これらのうち,最も簡便でよく用いられている定義は,排便回数の減少である.

患者の訴え方

 患者は「便の量が少ない」「便が硬い(兎糞状)」「排便しにくい」「排便の回数が少ない」「便意がない」などと訴えることが多い.便遺残感など,種々のものが含まれ,これら単独あるいは複合した意味で用いられる.また,腹部膨満感,腹部不快感,腹痛などを伴うことが多い.

患者が便秘を訴える頻度

 米国での検討では,便秘は一般人の約2%にみられ,そのなかで便秘を主訴に病院を受診する人は1.2%程度であるとされる.便秘は男性より女性に多く,加齢とともに増加する.たとえば,2019年の厚生労働省の国民生活基礎調査によれば,便秘の頻度は20〜40歳代で男性1%前後,女性3〜4%,50〜60歳代で男性2〜4%,女性4〜6%,70歳以上では男性6〜12%,女性8〜11%であった.欧米においても同様の傾向が認められている.

症候から原因疾患へ

病態の考え方

 経口摂取された食物は,消化吸収を受けて盲腸に達し(2〜6時間),上行結腸から横行結腸中部でさらに水分が吸収されて便塊が形成される(5〜6時間).そして,徐々に下行結腸からS状結腸に送られる(12時間前後).

 S状結腸直腸移行部の平滑筋は緊張性に収縮しているため,便塊はS状結腸に蓄えら

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?