診療支援
診断

心不全
heart failure
東谷 迪昭
(東京逓信病院循環器内科)

心不全とは

定義

 日本循環器学会ならびに日本心不全学会主導で急性心不全と慢性心不全に分かれていた心不全の診療ガイドラインが2017年改訂版で1本化された.急性心不全の多くが慢性心不全の急性増悪であり,心不全発症前から急性期そして慢性期まで絶え間ない継続的な治療が必要であることから,診療ガイドラインも急性と慢性の2つに区分するのは現代の心不全診療にそぐわないという認識である.

 また,悪性疾患がわが国においてはごく一般的に非医療従事者に浸透しているのに反し,心不全のイメージは浸透していない.このため,心不全は予後不良な疾患群であり本人による意思決定を支援するプロセスであるACP(advance care planning)などが重要であるにもかかわらず,日常臨床においては十分に行われていない現状がある.このような現状をふまえ,非医療従事者にも心不全をわかりやすく理解してもらう必要があると考え,日本循環器学会と日本心不全学会から,2017年10月31日に非医療従事者向けに心不全の定義が発表された(『心不全の定義』について).医療従事者向けの詳細な定義が「なんらかの心臓機能障害,すなわち,心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果,呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し,それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」である一方,非医療従事者向けの定義は,「心不全とは,心臓が悪いために,息切れやむくみが起こり,だんだん悪くなり,生命を縮める病気です」と,簡易かつ予後不良な疾患であることが伝わりやすくなっている.

患者の訴え方

(表1)

 「左房圧上昇による肺うっ血」すなわち左心不全,「右房圧上昇による体静脈うっ血」すなわち右心不全,そして「低心拍出量」の3つの病態に分けて症状を理解することが重要である.

 左心不全の症状として,初期においては労作時の息切れや動悸,

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