診療支援
診断

急性腹症
acute abdomen
鈴木 修司
(東京医科大学消化器外科学分野 主任教授)

急性腹症とは

定義

 急性腹症とは,一般的には発症1週間以内の突然発症した急激な腹痛のなかで,緊急手術やそれに代わる迅速な対応が必要な腹部(胸部なども含む)疾患の総称である.

 急性発症の腹痛には全身状態の低下,バイタルサインの変化により病態把握が困難なことがあり,確定診断が得られないまま緊急に対応する必要が生じる場合もあることから,急性腹症という概念が導入されている.

 急性腹症の原因となる疾患は,①腹痛部位の局在,②炎症・感染,機械的閉塞,循環障害などの病態,③腹部以外の疾患,④初期対応の緊急度により分類される.

 腹痛の原因診断へのアプローチには,基礎疾患,病歴,身体所見,臨床検査,画像検査を総合的に評価する必要がある.近年,急性腹症の原因疾患の診断は,画像診断の進歩により,以前に比べて比較的容易となってきており,初期対応の診断補助に寄与している.しかし,高齢者や小児の病態把握は困難なことが多く,また血流障害の一部には初期症状が乏しく,早期診断が困難な疾患もあり,緊急性が増すことも念頭におかなければならない.

患者の訴え方

 患者の腹痛の訴えには大きく分けて体性痛と内臓痛(疝痛),関連痛があり,その痛みの性状や強さが重要である.

 体性痛は,壁側腹膜や腸間膜などへの物理的刺激による炎症で起こるものである.“持続的に刺すような痛み(鋭い痛み)”が特徴的で,「ヒリヒリ」「ズキズキ」「しみるような」「灼けるような」「脈打つような(ズキンズキン)」「うずくような」と訴える.

 内臓痛は,管腔臓器の平滑筋や壁側腹膜の過伸展や拡張,攣縮によって起こるもので,“周期的・間欠的に差し込むような痛み(鈍痛)”が特徴的で,「鈍い」「圧迫されたような」「締めつけられるような」「重い(ズーンとした)」「ギューッと」などのように訴える.

 関連痛とは,内臓から生じた疼痛が本来の場所でなく,別の部位に生じるもので,

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