診療支援
診断

急性感染症
acute infections disease
横田 恭子
(香川大学医学部附属病院感染症教育センター センター長)

急性感染症とは

定義

 急性感染症とは,生体内で病原体が増殖し,比較的急速な経過で症状をきたした場合である.

患者の訴え方

 患者の主訴としては,なんらかの体調の変化を訴えて受診する場合が多い.ただし,免疫不全状態の患者においては,たまたま炎症所見やなんらかの検査値の上昇を指摘されて受診する場合もある.


‍ 臓器を示唆する症状があるかないか,それが問題だ. 


 感染が局在するタイプのものであればその部位に起因する症状を,局在しないものであれば,全身倦怠感,発熱,多発関節痛,頭痛,リンパ節腫脹などの複数の解剖学的には関連のない症状を訴えて受診する可能性がある.

 注意する必要があるのは,急性に体調不良をきたす疾患は感染症以外の原因であることも多くあり,急性感染症の診断は,同時にそれらの疾患を鑑別していくということでもある.

急性感染症の頻度

 患者が急性感染症と診断される頻度は,受診する医療機関によって異なると考えられるが,わが国の報告では,大学病院の総合内科の外来を受診する主訴として,発熱は6%と報告されている.また,カナダのプライマリケアクリニックを対象とした研究では,診断名は急性上気道炎が最も多く,上位10位までに肺炎,急性中耳炎が含まれていた.米国のERの受診理由の上位10位のなかにも,皮膚の軟部組織感染症,急性上気道感染症,歯の痛みなどの明らかな感染性疾患が複数含まれており,最終診断は10%程度が急性感染症によるものであったとされている.これらのERやプライマリケアクリニックの受診患者には,高血圧や外傷の患者も含まれているため,なんらかの体調不良の患者が受診した際に,急性感染症である可能性は十分あるとして診療にあたる必要がある.

症候から原因疾患へ

病態の考え方

 急性感染症の感染経路は以下の2つに分けられる(図1)

①体内には存在しない病原体が外部から侵入し,症状をきたした場合

②体内に

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