診療支援
診断

誤飲・誤嚥
accidental ingestion,aspiration
宮道 亮輔
(自治医科大学メディカルシミュレーションセンター・救急医学 准教授)

誤飲・誤嚥とは

定義

 誤飲は食物以外のもの(異物:硬貨や安全ピン,玩具など)を誤って口から摂取することであり,誤嚥は食物や異物が誤って気道に入ってしまうことである.

 誤飲で口から摂取した異物は,咽頭から食道を通って胃や腸へ進む(咽頭異物,食道異物,胃・消化管異物など)こともあれば,喉頭から気管に入る場合(喉頭異物,気管異物,窒息)もある.誤飲と誤嚥は同義に用いられることも多い.

 気道異物は基本的に緊急事態である.窒息で気道が完全に閉塞すると死に至る.完全閉塞でなくても,酸素化不良,化学性肺炎や誤嚥性肺炎を引き起こす可能性がある.消化管異物では,肛門から排出されるまで待てばよいものもあるが,ボタン電池や先の尖った物など,異物によっては食道や胃,腸の穿孔や閉塞を起こす危険がある.

患者の訴え方

 患者は,無症状であることもあれば,持続性または一過性に「息苦しい」「吐きそう」「異物がある」などと訴えることもある.異物や食物が気道を塞ぎ窒息状態に陥ると,発語ができなくなり,両手で首をかきむしる窒息のサイン(choking sign)を呈する.

 意識が清明な患者は異物を飲み込んだ経緯を述べることができる場合が多いが,幼児や認知機能障害のある高齢者,精神疾患患者などでは,正確な経緯を述べられない可能性がある.目撃がなく,付き添いの人も完全に状態を把握できていないことも多い.

誤飲・誤嚥の頻度

 不慮の窒息による死亡は年間8千人程度であり,不慮の事故による死亡の20%程度を占める.不慮の窒息による死亡の全死亡に占める割合は,3歳以下では3〜5%程度だが年齢が上がると徐々に減っていき,15歳以上では1%未満となる.しかし,不慮の窒息で死亡した者のなかでは0歳が約2%で1〜15歳は1%未満であり,その後は年齢を重ねると徐々に割合が増え,65〜79歳が約30%,80歳以上は50%以上と高齢者が多数を占め

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