診療支援
診断

全身倦怠感
48歳 男性
奈良 信雄
(日本医学教育評価機構 常勤理事/順天堂大学医学部 客員教授/東京医科歯科大学 名誉教授)

現病歴:昨年の会社の定期健診で脂質異常症を指摘され,スタチン系薬物を服用していた.その後,夜間に舌を噛むようになり,薬剤添付文書をみて薬物による副作用の筋肉障害と思い,3か月ほどで自身の判断で服薬を中断していた.2か月前頃から身体がだるく感じるようになり,仕事をする気力も低下してきた.今年の定期健診で再び脂質異常症を指摘され,精査のため受診した.

既往歴:特記すべきことはない.

生活歴:喫煙歴なし.飲酒歴はビール350mLを週4回程度.海外渡航歴はない.薬物はスタチン系薬物を昨年に3か月ほど服用した以外にはない.

家族歴:母親(71歳)が橋本病で治療を受けている.

身体所見:意識は清明.身長163cm,体重68kg,体温36.0℃,血圧132/74mmHg.皮膚は乾燥し,結膜に貧血・黄疸はない.巨舌を認める.前頸部にびまん性の腫脹を認める.心肺に異常所見なく,腹部にも異常所見を認めない.下腿浮腫はない.

【問題点の描出】

脂質異常症を指摘されている48歳男性.全身倦怠感,気力低下があり,巨舌を認める.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・感染症

・悪性腫瘍

・心肺疾患

・肝疾患

・貧血

・内分泌・代謝疾患

・腎疾患

・神経筋疾患

・薬物依存症

・精神神経疾患

・生理的疲労

頻度の高い疾患

・生理的疲労

・精神神経疾患

・慢性感染症

・貧血

・内分泌・代謝疾患

・悪性腫瘍

・慢性疲労症候群

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 全身倦怠感で受診した患者では,まず身体疾患による身体的疲労か,過労による生理的疲労やストレスなどによる精神的疲労なのかを判断する必要がある.精神的疲労は,患者の生活歴や医療面接での質疑応答,表情などからある程度判断が可能である.身体的疲労の可能性を除外してから精神的疲労を考える.

 全身倦怠感は,組織の低酸素,低血圧,老廃物蓄積,ホルモン分泌不全,低栄養などによる細胞レベルでの

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