診療支援
診断

体重減少
35歳 女性
倉橋 清衛
(徳島大学大学院地域呼吸器・血液・代謝内科学 特任講師)
遠藤 逸朗
(徳島大学大学院生体機能解析学 教授)

現病歴:2か月前に受けた職場の健康診断では52kgであった体重が,特に意図せずに42kgまで減少し,易疲労感を伴うようになったため受診した.

既往歴:特記すべきことはない.服薬なし.

生活歴:主婦.1日3食摂取し,食欲は旺盛でよく食べている.便通は良好.喫煙歴と飲酒歴はない.運動習慣はない.

家族歴:母親が橋本病.父親が2型糖尿病.

身体所見:意識は清明.身長158cm,体重42kg,体温36.2℃,脈拍102回/分(整),血圧120/56mmHg,呼吸数16回/分,SpO2 99%(room air).前頸部の腫脹を認める.心音,呼吸音に異常を認めない.腹部は平坦・軟で肝・脾を触知しない.皮膚は湿潤.両手指に振戦を認める.下腿に浮腫を認めない.

【問題点の描出】

生来健康な35歳女性.食欲があり,食事を十分摂取しているにもかかわらず短期間で意図しない体重減少が起こっている.随伴症状として易疲労感,前頸部の腫脹,頻脈,皮膚の湿潤および手指振戦を認める.自己免疫性甲状腺疾患の家族歴あり.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・悪性腫瘍

・神経性やせ症

頻度の高い疾患

・悪性腫瘍

・消化器疾患(肝疾患を含む)

・精神疾患(うつ状態,神経性やせ症,不安障害など)

・内分泌代謝疾患(甲状腺中毒症,糖尿病)

・慢性炎症(感染症,膠原病など)

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 本症例はBMI 16.8と低体重で,6~12か月以内に体重が4.5kg以上かつ5%以上減少しており,病的な体重減少がみられるのみならず,適正体重の20%以上にあたる10kgの体重減少が起こっており,るいそうに至っているため原因疾患の検索を行うべき状況である.

 鑑別診断を行うにあたり意識しておくべき重要事項として,意図しない体重減少の原因のうち最も臨床的重要度が高く,見逃してはいけない疾患は悪性腫瘍であり,常に念頭

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