診療支援
診断

皮疹,瘙痒
60歳 男性
川内 康弘
(東京医科大学茨城医療センター皮膚科 教授)

現病歴:1か月前に左前足部に紅斑と瘙痒を自覚し,水虫と自己診断して市販の抗真菌剤を塗布していた.当初の紅斑と瘙痒はいったん軽快したが,2週ほど前から徐々に紅斑と瘙痒が再増悪してきたため受診した.

既往歴:特記すべきことはない.

生活歴:事務系会社員.喫煙歴なし.飲酒歴はビール350mLを週4回程度.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:全身状態良好.全身皮膚の乾燥と落屑あり.左前足部背面に落屑痂皮を伴う瘙痒性紅斑局面あり(図1).紅斑局面内には亀裂も混じる.鼠径リンパ節腫大はない.

【問題点の描出】

これまで健康な60歳男性.足水虫と自己診断し,市販の抗真菌薬を塗布しているうちに皮疹と瘙痒が増悪し,受診.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・乾癬

・膿痂疹

・皮膚リンパ腫

・皮膚抗酸菌感染症

頻度の高い疾患

・足白癬

・アトピー性皮膚炎

・接触性皮膚炎

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

‍ 〈p〉身体診察で皮疹を観察する際,まず当該皮疹がどのような原発疹・続発疹から構成されているかを分析するのが基本である.本症例では,紅斑がベースにあり,さらに紅斑上に落屑と痂皮を伴っている.続発疹として亀裂の形成もある.次に,〈p〉皮疹の主座が組織学的にどの深さ(表皮・真皮・皮下組織)にあるかを考える.本症例では,落屑,痂皮,紅斑があり,病変の主座は表皮から真皮浅層にあることが推察される.第3に,〈p〉皮疹がどの病因カテゴリーに属するか,症候・病態編「皮膚の異常」で挙げた病因カテゴリー〔炎症,感染症,腫瘍,奇形・母斑(遺伝),退行・萎縮性病変,進行性・増生病変,血行障害,代謝・栄養障害,環境性病変〕のなかから絞り込む.本症例では,紅斑,痂皮があることから,病因カテゴリーのなかで,炎症性病変または感染性病変であると考えられる.以上をまとめると,まず身体診察により,皮疹は①紅斑,落屑

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