診療支援
診断

眼の充血,頭痛と悪心
68歳 男性
村上 晶
(順天堂大学 名誉教授)

現病歴:前日夕方から右こめかみを中心とした頭痛と眼の充血があり,夜間にかけ増強してきた.市販の頭痛薬を摂取したが改善がなく,悪心が強くなり眠ることができなかった.今朝になり老眼鏡をかけても右眼はピントが合いにくくなり,大きな文字も霞んで見えることに気がついた.

既往歴:特記すべきことはない,1年前の職場の健診では腹囲以外は異常を指摘されたことはない.

生活歴:3年前に会社勤務を定年退職.現在は週4日,知人が経営する会社の経理を非常勤で手伝っている.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長175cm,体重76kg,脈拍76回/分(整).髄膜刺激症状はなし.右眼の眼球結膜の充血を認める.左眼は異常を認めない.右眼の瞳孔は中等度散大,瞳孔反応は消失しているが,左眼瞳孔には異常を認めない.

【問題点の描出】

頭痛と片眼性の視力障害があり,同側の眼球結膜に充血を認め,瞳孔が散大して瞳孔反応が消失している(前眼部の写真:図1).

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・ウイルス性結膜炎

・くも膜下出血

頻度の高い疾患

・眼部帯状疱疹

・急性原発閉塞隅角症

・虹彩毛様体炎

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 強い頭痛はあるものの,〈除〉髄膜刺激症状はなく,〈除〉感冒,上気道感染症状もない.

‍ 〈p〉片眼の視力障害〈p〉頭痛,悪心,〈p〉瞳孔異常〈p〉角膜の混濁から,急激な眼圧上昇による症状を疑う.

 これまで眼疾患の既往はなく,年齢からみて,解剖学的な素因によって瞳孔領虹彩と水晶体が接着して房水が前房に流出されなくなり,さらに虹彩が前方に押されることで隅角が閉塞してしまう状態になり,眼圧が急激に上昇している可能性が高い.

診断仮説(仮の診断)

急性緑内障発作

必要なスクリーニング検査

 視力検査,眼圧測定,細隙灯顕微鏡検査.

 細隙灯顕微鏡による前房深度の確認,高眼圧の確

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