診療支援
診断

反応が鈍い
91歳 女性
山形 真吾
(島根大学医学部大田総合医育成センター・内科 教授)

現病歴:午前4時頃に施設の職員が声をかけた際には反応があったが,午前7時前に訪室した際には反応に乏しく,近医に往診を依頼した.診察を経て,意識障害・両側縮瞳の情報で救急搬送となった.高血圧にて加療中.

既往歴:右大腿骨転子部骨折術後,第5腰椎圧迫骨折,腸閉塞.

生活歴:4年前より老人施設入所中.歩行器を用いて施設内の移動は可能であった.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識障害(JCS Ⅲ-100).血圧116/70mmHg,脈拍60回/分,呼吸数18回/分・正常振幅.瞳孔2mm径と両側縮瞳.用手開眼後しばらくの開眼保持あり,眼位はほぼ正中だが,水平性の眼球彷徨あり.drop testでは左が速く,しかし両側とも比較的速やかに落下する.四肢の深部腱反射は両側とも強めで,両側Babinski(バビンスキー)反射陽性.痛み刺激に右手で振り払うような仕草は認める.

【問題点の描出】

反応の低下を認め,老人施設から救急搬送となった患者.意識障害と四肢不全麻痺を認める.両側瞳孔は縮瞳していた.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・くも膜下出血

・脳梗塞

・脳出血

・低血糖

・中毒(有機リン,麻薬)

・肝性脳症

・脳炎

頻度の高い疾患

・脳梗塞

・橋出血

・低血糖

・てんかん

・認知症,睡眠覚醒障害

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 四肢不全片麻痺と昏迷から半昏睡程度の意識障害で,刺激による除脳硬直肢位や除皮質硬直肢位の誘発はなく,両側縮瞳を呈していた.drop test陽性と思われ,両側Babinski徴候を認める点から,〈p〉左に強い四肢不全麻痺を呈しているものと推察された.特記すべきは〈p〉両側縮瞳を呈している点で,瞳孔散大にかかわる交感神経路の両側性の障害の可能性が示唆された.橋出血で両側縮瞳をきたすことはよく知られているが,〈除〉血圧の上昇は乏しく比較的穏やかな印象であり,

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