診療支援
診断

眼球運動障害,意識障害
65歳 男性
青山 淳夫
(島根県立中央病院神経内科 部長)

現病歴:朝食後テレビを見ていたときは普段と変わりなし.午前10時頃玄関で倒れているところを発見された.呼びかけに反応なく,救急要請された.

既往歴:肝機能異常を指摘されていたが受診なし.

生活歴:職業は農業.喫煙は20〜50歳まで20本/日.飲酒は週5日,ビール.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:Glasgow Coma Scale 6(E1V1M4).脈拍73回/分(整),血圧138/75mmHg,呼吸数8回/分(閉塞様呼吸),体温37.2℃,SpO2 97%(room air).眼球は両眼ほぼ正中固定,瞳孔5mm/5mm,対光反射(なし/なし).四肢の随意的な動きは認めない.

【問題点の描出】

これまで健康な男性の突然の意識消失と眼球運動障害.眼球は正中からほとんど動かず,両眼の瞳孔散大や対光反射消失を伴う.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・脳幹梗塞,脳幹出血,脳底動脈先端症候群,脳腫瘍や血管奇形からの出血

・代謝性脳症〔低血糖脳症,Wernicke(ウェルニッケ)脳症,低酸素脳症など〕

・髄膜脳炎など感染症

頻度の高い疾患

・脳幹梗塞,脳底動脈先端症候群

・脳幹出血

・低血糖脳症,Wernicke脳症

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 突然発症で意識は悪く,呼吸数が8回/分と少なく閉塞様である.バイタルサインの変化に注意しながら診療を進める.〈除〉意識障害をみた場合,低血糖は真っ先に除外すべきである.

 本症例の場合,〈p〉突然発症で,眼球運動が乏しいことも特徴である.〈p〉左右差がはっきりしない点も留意する点である.眼球運動に関係する脳部位を考えると両側橋のPPRF(paramedian pontine reticular formation)にまたがる病変,両側中脳動眼神経核・外転神経核を含む病変,両側視床や大脳8野を含む病変などが考えられる〔症候

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