診療支援
診断

味覚障害
61歳 男性
近藤 健二
(東京大学大学院耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 教授)

現病歴:小脳出血にて血腫除去術を施行され,下記の投薬を開始.約1か月半後から口のなかが苦く,食事の味を感じないという症状が出現し耳鼻咽喉科に紹介.においはわかる.味覚の変化が生じる前に上気道炎症状はなかった.

既往歴:高血圧,不眠症,腰痛症.抜歯歴なし,扁桃手術を含めた頸部の手術歴なし.

生活歴:喫煙なし,機会飲酒.服薬;アムロジピン,スボレキサント,セレコキシブ,テルミサルタン,トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合錠,ベタヒスチンメシル酸塩,モサプリドクエン酸塩,ラベプラゾールナトリウム,ラメルテオン,レバミピド,ロキソプロフェン.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:鼻副鼻腔炎像なし.口腔内は唾液で湿潤しており,舌は発赤,菲薄化は認めない.舌苔の付着なし.顔面神経麻痺なし,カーテン徴候なし,嚥下障害なし.

【問題点の描出】

小脳出血にて手術,服薬開始後約1か月半で出現した舌に異常所見を認めない味覚障害.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・嗅覚障害による風味障害

・鉄欠乏性貧血に伴う味覚障害

・悪性貧血に伴うHunter(ハンター)舌炎

・頭頸部腫瘍・頭蓋底腫瘍

・脳出血・脳梗塞

頻度の高い疾患

・亜鉛欠乏性味覚障害

・特発性味覚障害

・薬物性味覚障害

・感冒後味覚障害(COVID-19を含む)

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 自覚症状として味覚の低下を訴える場合,①狭義の味覚障害と②味覚の低下はなく嗅覚が低下して味を感じにくくなっている風味障害の2つの可能性がある.後者はウイルス性〈除〉上気道炎や頭部外傷などで急性に神経性嗅覚障害が起こった場合に高率に発生する.本患者は〈除〉嗅覚は保たれているため,狭義の味覚障害と考えられる.

 味覚障害では鉄欠乏性貧血,ビタミンB12欠乏性貧血など舌に変化を認める場合と,〈除〉舌に視診上の変化を認めない場合があり,本患者は

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