現病歴:4か月前から咳嗽を自覚していたが放置していた.2週間前に突然の声がれを自覚し,周囲から指摘されるようになった.精査を希望して受診した.
既往歴:特記すべきことはない.常用薬なし.
生活歴:22歳より公務員.粉塵曝露なし,アスベスト吸入なし.喫煙歴20〜63歳,20本/日.飲酒歴はビール350mLを週5回程度.
家族歴:特記すべきことはない.
身体所見:意識は清明.身長164cm,体重70kg(体重減少:6か月で2kg減少),体温36.0℃,脈拍72回/分(整),血圧112/76mmHg,呼吸数15回/分,SpO2 98%(室内気).発声時に嗄声を認める.頸部リンパ節を触知しない.咽頭・扁桃・口腔内は異常なし.心音に異常を認めない.呼吸音は正常で左右差を認めない.腹部は平坦・軟で肝・脾を触知しない.ばち状指なし.下肢に浮腫なし.体表に明らかな外傷・手術痕はない.
【問題点の描出】
既往のない63歳の男性.突然発症した嗄声によって受診.喫煙者.身体所見では明らかな異常を認めない.
診断の進め方
特に見逃してはいけない疾患
・反回神経麻痺(喉頭癌,肺癌,食道癌,縦隔腫瘍)
・神経疾患(重症筋無力症など)
頻度の高い疾患
・上気道炎
・急性・慢性喉頭炎
・喉頭異物
・声帯ポリープ
・外傷
この時点で何を考えるか?
医療面接と身体診察を総合して考える点
嗄声(hoarseness,かれ声)は音声障害のうちの1つで,両側声帯がうまく合わないのか,両側声帯間に異物が挟まっていないか,声帯の質的変化をきたしていないか確認する.特に反回神経麻痺の存在は重大な病気が潜んでいる可能性がある.発症に心理的なストレスが影響している際などは機能性音声障害も疑う.医療面接により原因疾患を推定していくことが重要であり〔症候・病態編「嗄声」の表2図参照→〕,鑑別診断を念頭に丹念に聴取していく必要がある.
この患者では会話を行うための聴
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