診療支援
診断

全身倦怠感,食欲不振,脾腫大
45歳 男性
清澤 研道
(相澤病院消化器病センター 名誉センター長/肝臓病センター 顧問)

現病歴:20歳時に肝障害があったがAST,ALTが正常化し安定したため普通の生活をしていた.1か月前から全身倦怠感が出現,3日前から倦怠感がさらに強くなり,かかりつけ医を受診した.黄疸と脾腫大を指摘され精査のため紹介された.

既往歴:20歳代に肝障害あり.

生活歴:会社員,30歳から晩酌で缶ビール350mLを1缶毎日飲酒.

家族歴:母親は55歳時に肝癌で死亡.

身体所見:意識は清明.身長172.0cm,体重67.0kg,BMI 22.6,体温36.2℃,血圧110/65mmHg.眼瞼結膜に貧血なし,眼球結膜に黄疸あり.手掌紅斑あり.腹部は平坦.肝臓は右鎖骨中線上1cm,剣状突起に下3cm触れる,弾性硬,辺縁鈍,表面不整.脾臓は右側臥位で左季肋部肋弓下に2cm触れる,表面平滑,中央に切れ込みあり.腹水なし.下腿浮腫なし.

【問題点の描出】

20歳代に肝障害の既往がある40歳代の男性.母親が肝癌で死亡している.全身倦怠感,黄疸があり硬い肝臓を触れる.脾腫大がある.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・肝硬変症

・悪性リンパ腫

・骨髄増殖性疾患

・膠原病

・溶血性貧血

・ウイルス感染症(肝炎ウイルス,EBウイルス,サイトメガロウイルスなど)

頻度の高い疾患

・肝硬変症

・伝染性単核球症

・急性ウイルス肝炎

・膠原病

・悪性リンパ腫

・溶血性貧血

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 全身倦怠感,黄疸があり,硬い肝臓を触れることから慢性肝疾患が考えられる.貧血や全身のリンパ節腫大がないことから,脾腫大は慢性肝疾患,特に肝硬変による門脈圧亢進症によると考えられる.

診断仮説(仮の診断)

肝硬変による脾機能亢進症(脾腫大)

必要なスクリーニング検査

 尿検査,血液生化学検査,肝炎ウイルスマーカー,腹部超音波検査を行う.

検査結果

尿検査:蛋白(−),糖(−),ビリルビン(+).

血液凝固検査:WBC 4,32

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