診療支援
診断

左上肢痛,左手指しびれ
50歳 男性
宮田 誠彦
(国立病院機構京都医療センター整形外科 医長)

現病歴:約1か月前,起床時に項部痛を自覚した.その翌日より左上肢痛(上腕~前腕),左肩甲骨付近の痛み(肩甲骨と脊柱の間),左手指(示指,中指,環指)のしびれが出現した.特に中指のしびれが強い.痛みが強くて営業職の仕事に支障がある.夜間も左上肢痛のために眠れない.

既往歴:高血圧,脂質異常症.

生活歴:営業職歴25年.喫煙歴30年(1日10本).飲酒歴はビール700mLを週3日.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長175cm,体重70kg,血圧,脈拍,呼吸数などのバイタルサインは正常.神経学的所見;右手(利き手)での箸使いや書字などの手指巧緻運動は問題なし.頸椎を左側にやや後屈させると左上肢痛が悪化する.肩関節の可動域制限はなし.上腕二頭筋反射,腕橈骨筋反射は左右差なく正常.上腕三頭筋反射は左が減弱.膝蓋腱反射,アキレス腱反射は左右差なく正常.Hoffmann(ホフマン)反射,Babinski(バビンスキー)反射は両側陰性.立位や歩行は安定しており,継足歩行や片脚起立も可能で,Romberg(ロンベルク)徴候は陰性.徒手筋力テストでは,左上腕三頭筋(肘関節の伸展)が筋力4に低下.左示指,中指,環指に軽度の知覚鈍麻を認める.排尿障害はなし.

【問題点の描出】

頸部の特定の姿勢により片側の上肢痛は増悪する.それに加えて,片側上肢の部分的な知覚障害や筋力低下を伴う.手指巧緻運動障害や歩行障害は認めない.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・狭心症

・心筋梗塞

・肺尖部腫瘍

頻度の高い疾患

・頸椎椎間板ヘルニア

・頸椎症

・肩関節周囲炎

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 頸椎を左側にやや後屈させると左上肢痛が悪化すること〔Spurling(スパーリング)テスト陽性〕から,まずは頸椎に関連した疾患を疑う.上腕三頭筋反射の中枢は主にC7,上腕三頭筋の神経支配は

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?