診療支援
診断

理解力低下,手指の不随意運動
62歳 男性
長井 篤
(島根大学医学部内科学第三 教授)

現病歴:数年前より怒りっぽくなり,会話の内容を理解するのに時間がかかる,テレビの内容がすぐに頭に入らないことを自覚.最近,書字が乱れたり,歩行がスムーズにできなくなってきた.

既往歴:2年前に脊柱管狭窄症.

生活歴:喫煙なし.飲酒なし.

職業歴:自衛隊勤務後,退職.

家族歴:父親が70代で寝たきりになり死亡.

身体所見:意識は清明.身長164cm,体重54.2kg,血圧140/72mmHg,脈拍78回/分,SpO2 97%(room air),体温36.6℃.心雑音なし.神経学的所見として,見当識正常,計算93-7=88,物の名前が出ないことあり.瞳孔は正円同大,対光反射は正常.眼球運動障害なし.表情筋筋力低下なし.聴力低下なし.挺舌は偏位しないが,引っ込んだり出たりの不随意運動あり.上下肢のBarré(バレー)徴候やMingazzini(ミンガツィーニ)徴候陰性.深部腱反射は上下肢ともに正常.病的反射なし.四肢筋力低下なし.歩行時などに顔がしかめっ面様に動き,両手先のぴくつくような速い動きがときどきあり.立位で体の動揺あり.Romberg(ロンベルク)徴候陰性.指鼻指試験;できるが手先の不随意運動を伴う.知覚系に異常なし.排尿・排便・発汗障害自覚なし.

【問題点の描出】

これまで健康な60代男性.高次機能障害,顔面,舌,手先の不随意運動が徐々に進行している.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・高次機能障害をきたす疾患

・不随意運動をきたす疾患

・代謝性脳症

・Creutzfeldt-Jakob(クロイツフェルト・ヤコブ)病

・正常圧水頭症

頻度の高い疾患

・多発性脳梗塞

・Parkinson(パーキンソン)病・Lewy(レビー)小体型認知症

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 本患者は,言葉の内容を理解しにくいという症状があり,言語中枢における障害の可能性がある.診察所見

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