診療支援
診断

労作時呼吸困難
34歳 男性
東谷 迪昭
(東京逓信病院循環器内科)

現病歴:2週間前から労作時息切れと下腿浮腫が出現.4日前から夜横になると咳嗽が出現.労作時呼吸困難が増悪傾向であり,本日臨時受診となった.

既往歴:32歳で高血圧を指摘されたが無治療.

生活歴:22歳より会社員,多忙でストレスは大きい.機会飲酒.喫煙中20本/日.

家族歴:特記すべきことはない.突然死の家族歴もなし.

身体所見:意識は清明.身長173cm,体重74.1kg,脈拍96回/分(整),血圧164/100mmHg,呼吸数20回/分,SpO2 95%(room air),体温36.3℃.頸部リンパ節を触知しない.頸静脈怒張あり.心音;Ⅲ音を聴取,心雑音なし.呼吸音;明らかな雑音なく左右差なし.腹部は平坦・軟で肝・脾を触知しない.両側に圧痕を伴う下腿浮腫あり.

【問題点の描出】

無治療の高血圧を有する,下腿浮腫とⅢ音を伴った増悪する労作時呼吸困難を主訴とした34歳男性.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・虚血性心疾患

・心不全

・肺炎

・気胸

・急性肺血栓塞栓症

頻度の高い疾患

・虚血性心疾患

・心不全

・肺炎

・喘息

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 呼吸困難は呼吸時の主観的な不快感だが,〈p〉呼吸数増加ならびに喫煙者ではあるものの〈p〉経皮的酸素飽和度の低下,頻脈傾向を有しており,器質性疾患の存在が想起される.〈p〉劇的な急性発症ではないが,〈除〉1か月以上持続するような慢性経過ではなく,また呼吸困難症状は増悪傾向にある.現時点での緊急性は非常に高いわけではないが,臨時受診時点で診断し治療を開始できなければ重篤化することが予想される.

‍ 〈p〉2週間で増悪する労作時呼吸困難の原因としては,主に心疾患,肺疾患が考えられる.心疾患としては,虚血性心疾患不整脈心不全,肺疾患としては,肺炎喘息気胸急性肺血栓塞栓症などである.〈p〉身体所見を併せると心不全が最も考え

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?