診療支援
診断

腰背部痛
32歳 男性
望月 俊明
(がん研究会有明病院救急部・集中治療部 副部長)

現病歴:階段を踏み外し,5段ほどの高さから転落.左腰背部を打撲,疼痛強く,救急車で来院した.

生活歴:独居で喫煙歴,飲酒歴はなし.

既往・アレルギー歴:特記すべきことはない.内服歴なし.最終摂食は5時間前.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長180cm,体重80kg,脈拍130回/分(整),血圧100/50mmHg,呼吸数20回/分,SpO2 96%(room air).

primary survey:気道,呼吸異常なし,頻脈を認める.左腰背部の打撲痕と圧痛を認める以外に体表の外出血はなし.皮膚は冷たく湿っているが,毛細血管再充満時間(CRT)2秒以内.胸部,骨盤X線も異常なし.FAST(focused assessment with sonography for trauma)にて脾臓周囲に液体貯留を認めた.急速補液を1,000mL行ったところ,皮膚色調改善し,脈拍80回/分,血圧100/60mmHgと改善.

secondary survey:頭部,顔面,頸部に外傷はなく,胸部呼吸音左右差なく,皮膚握雪感なし.左季肋部から腰背部に圧痛あり,皮下血腫あり.腹部は軟らかいが,左側腹部に軽度圧痛あり,反跳痛はなし.背部脊柱の叩打痛なし.四肢の外出血なく,感覚,運動障害もなし.

【問題点の描出】

特に既往がない32歳の男性で,階段5段の転落による左腰背部痛の訴えで受診し,皮膚冷汗,頻脈を呈しており,FAST検査で脾周囲に液体貯留を認めるが,補液にて頻脈は改善した.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・内臓(脾臓・腎臓)損傷

・腹腔内出血

併存する可能性がある障害

・脊椎・肋骨骨折

・血気胸

・脊髄損傷

・大血管損傷

頻度の高い疾患

・打撲

・筋肉損傷

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 外傷診療では,出血が進むと容易にショック状態となるため,時間経過を考慮した診療

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