診療支援
診断

意識障害・痙攣発作
46歳 男性
上條 吉人
(埼玉医科大学臨床中毒学 教授)

現病歴:32歳時に双極性障害を発症し,精神科病院に2度の入院歴がある.最近は精神科クリニックより炭酸リチウム1,200mg/日およびクエチアピン200mg/日が処方されていた.2週間前よりうつ状態となり,食欲が低下し食事および水分摂取量が減少した.3日前より腹痛・下痢および四肢の振戦が出現し,前日には傾眠および体動困難となった.また,尿量の減少に気づいていた.早朝に痙攣発作を認めたため救急搬送された.

既往歴:双極性障害以外に特記すべきことはない.

生活歴:大学卒業後に地方公務員となった.喫煙歴なし.飲酒歴なし.

身体所見:意識レベルJCS 100.身長172cm,体重63kg,脈拍96回/分(整),血圧112/60mmHg,呼吸数24回/分,SpO2 96%(room air),体温38.6℃.全身の著明な筋強剛および四肢の振戦を認めた.

【問題点の描出】

炭酸リチウムおよび抗精神病薬を服用中の46歳男性.食事および水分摂取量の減少を契機に高体温および意識障害・痙攣発作・筋強剛・振戦などの神経症状が出現した.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・器質性頭蓋内病変

・悪性症候群

・慢性リチウム中毒

・水中毒

・髄膜脳炎

・敗血症

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 意識障害・痙攣発作という重度の中枢神経症状を認めることから,非常に緊急性が高い病態で,速やかな診断による適切な治療の開始が必要であると考えるべきである.

 重度の中枢神経症状を認めることから器質性頭蓋内病変を除外する必要がある.中枢神経症状が高体温を伴うことから,髄膜脳炎敗血症といった感染症の鑑別が必要である.慢性精神疾患のある患者に痙攣発作が生じたということから,心因性多飲などから生じる水中毒による低ナトリウム血症の鑑別も必要である.クエチアピンという抗精神病薬を服用している患者に,食事や水分摂取量

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