診療支援
治療

B 全身管理と情報収集──急性中毒の治療の5大原則(1)
上條 吉人
(北里大学特任教授・中毒・心身総合救急医学)

 全身管理のポイントは,基本的には気道(airway)の管理,呼吸(breathing)の管理,循環(circulation)の管理,中枢神経系(CNS)の管理である.急性中毒においては,とりわけ合併症(complications)の管理は重要である.筆者は,急性中毒における全身管理のポイントを記憶するためにAB&3Csという語呂合わせを考案してみた(初期対応のポイント30).外傷初期診療のトレーニング・コースであるJATECコースのprimary surveyは“ABCDE”であるのと同様に,「急性中毒の全身管理はAB&3Cs」と覚えるとよい.


気道(airway)の管理

①意識障害による舌根沈下などの気道の異常を認めたら,気管挿管により確実に気道を確保.

②意識障害による咽頭反射の減弱,または,消失を認めたら,胃内容物の逆流や嘔吐の際の誤嚥のリスクを低下させるために気管挿管により気道を確保.

③刺激性ガスや腐食性物質などによる咽頭攣縮,喉頭浮腫,喉頭蓋浮腫,喉頭攣縮,上気道浮腫,上気道閉塞を認めたら,気管挿管により気道を確保.気管挿管が困難であれば輪状甲状靭帯切開術(外科的気道確保)を施行.


呼吸(breathing)の管理

1)準備

①パルスオキシメーターにより酸素飽和度を持続モニター.

②動脈血ガスにより換気,および,酸素化の状態を頻回にチェック.


2)換気不全

 初期対応のポイント11にある薬毒物による呼吸中枢抑制作用や呼吸筋麻痺などが原因となる.

①気管挿管および人工呼吸器管理.

②人工呼吸器の呼吸回数を12~15回/分,1回換気量を12mL/kg以下になるように設定.


3)低酸素血症

 初期対応のポイント12にある薬毒物によるALI/ARDSなどが原因となる.

①酸素を投与してPaO2≧60Torr(SpO2≧90%)とする.

②非再吸収式リザーバーバッグ付きフェイスマスクを用いて高濃

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