診療支援
治療

28パラコート
上條 吉人
(北里大学特任教授・中毒・心身総合救急医学)

最初の10分メモ

含有する製品

・パラコート(グラモキソン®,パラゼット®)

・ジクワット・パラコート(プリグロックスL®,マイゼット®)


診断のポイント

・パラコートへの曝露歴または曝露を生じる状況がある患者に,青色の吐物を認めるまたは口腔内が青色に着色している.

・図1に示すように,尿を水酸化カリウムで塩基性にして,ハイドロサルファイトナトリウム溶液を添加して青色に変色すればパラコート中毒を疑う(ハイドロサルファイト反応).

・パラコートの血中濃度を測定して,Proudfootらのノモグラム(図2),Hartらのノモグラム(図3),Sawadaらのパラコート中毒の重症度指数(SIPP,図4)を用いて予後を評価する.


治療のポイント

・これまで,さまざまな治療法が試みられたが予後を改善するエビデンスはない.

・Proudfootらのノモグラム,Hartらのノモグラム,SIPPで死亡の可能性が大きければ緩和ケアを考慮.


Do&Don't

・パラコートを経口摂取した場合のみならず経皮吸収が考えられる場合は全例を入院治療.

・低酸素血症が生じるまでは酸素投与はしない.

・低酸素血症には,PaO2 55Torr前後を目安に最低限の酸素投与にとどめる.


概説

 非選択型除草剤であるパラコートは,毒性が非常に強いにも関わらずかつては世界中で広く用いられた.現在では,販売時の記名の際に身分証明書の提示が必要となるなど規制が厳しくなったために,ほとんど用いられなくなった(化学構造:図5).


薬物動態

・吸収されたパラコートは肺および腎臓に選択的に取り込まれる.

・ほとんどは未変化体のまま尿中に排泄される.


毒性のメカニズム

・図6に示すように,肺に取り込まれたパラコートは,NADPH-チトクロームP450還元酵素などの作用によって,電子を1つ受容して(還元されて)パラコート・ラジカルとなるが,パラコート・ラジカルは

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