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治療

【7】甲状腺腫・結節
goiter,thyroid nodule
鈴木 智晴
(浦添総合病院・病院総合内科)

症候を診るポイント

●びまん性か結節性か,有痛性か無痛性かについて診察を行う.硬さについての情報も重要である.

●甲状腺ホルモンの過剰/欠乏について評価する.眼球突出や精神状態・体重変化や手指振戦の有無など,甲状腺以外の症状にも注目する.

●悪性腫瘍では,結節が石状硬である,腫瘍の増大速度が速い,嗄声,周囲の組織との癒着,周囲のリンパ節腫脹を伴うことがある.

▼定義

 甲状腺がびまん性に腫大するものを甲状腺腫とよび,結節性に腫大するものを甲状腺結節とよぶ〔甲状腺の疾患については第7章の「甲状腺疾患」も参照〕.

▼病態生理

 甲状腺は甲状腺ホルモンを産生・分泌する臓器であり,輪状軟骨の尾側,気管の前面に存在する.甲状腺ホルモンは全身に作用するため,その多寡によりさまざまな症状が全身に現れる.

 甲状腺腫大は,ホルモン分泌が亢進している機能性腫大と,ホルモン分泌をしない非機能性腫大に分類される.分泌が亢進する病態に,抗甲状腺抗体により甲状腺ホルモン分泌が亢進し甲状腺腫大をきたすBasedow(バセドウ)病や,日本人ではまれであるが,結節が甲状腺ホルモンを自律的に分泌し,正常甲状腺が萎縮するPlummer(プランマー)病がある.甲状腺の破壊に伴って甲状腺中毒症状を示しうる甲状腺炎も甲状腺腫大の原因となる.非機能性腫大の原因には,甲状腺癌や悪性リンパ腫が含まれる.

▼初期対応

 受診の契機には,甲状腺の腫大以外にも,甲状腺炎でみられるような前頸部の痛みや,甲状腺ホルモンの多寡により引き起こされる全身症状がある.甲状腺ホルモン過剰では,意図しない体重減少や増加,手指振戦や気分のいらだちが出現しうる.甲状腺ホルモン欠乏では,認知機能低下,顔面や四肢の浮腫で受診することがある.浮腫や易疲労感は共通の症状である.その他に,画像検査で偶発的に結節が発見されて受診することもある.

 初期対応は,甲状腺の触診や全身の

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