▼定義
糸球体基底膜(glomerular basement membrane:GBM)に対する自己抗体である抗GBM抗体が原因となり,肺出血や急速進行性糸球体腎炎(rapidly progressive glomerulonephritis:RPGN)をきたす疾患である〔第12章「グッドパスチャー症候群」の項(→),第13章「抗GBM病」の項(→)参照〕.
▼病態
抗GBM抗体はⅣ型コラーゲンα3鎖に対する抗体であり,その主な分布臓器である肺胞上皮基底膜や糸球体基底膜に抗GBM抗体が結合して炎症を引き起こす.最近,抗GBM抗体とANCAの両者が陽性となる症例が報告されており,本症の病態とのかかわりが注目されている.
▼疫学
本邦ではきわめてまれな疾患であり,RPGN症例の1.5%を占めるにすぎない.30歳代と60歳代の二峰性の年齢分布を示す.男女比ではやや男性に多い.
▼診断
➊自他覚症状
初発症状は呼吸器症状が多く,血痰や呼吸困難がみられる.腎機能障害が高度になると浮腫なども認める.
➋血液検査
血清尿素窒素およびクレアチニンが上昇し,進行性の腎機能障害を呈する.抗GBM抗体が検出される.一部の症例では,ANCAが陽性となり,特にMPO-ANCAが多い.尿検査では蛋白尿,血尿を認める.
➌画像所見
肺胞出血では,主にすりガラス影を認め,一部で濃厚影を呈する.典型例では両側の肺水腫様陰影を示す.
➍気管支鏡検査
肺胞出血では,BALにて血性の洗浄液が回収される.
➎腎生検
IgGの係蹄壁への線状沈着を伴う壊死性半月体形成性糸球体腎炎を認める.
▼治療
血漿交換療法,高用量の副腎皮質ステロイド,シクロホスファミド(CPA)の併用療法が標準的治療である.
▼予後
上記の併用療法が導入されてから,本症の生命予後は大きく改善した.しかし,腎機能の予後に関しては,初期に血清クレアチニンが高値の症例
関連リンク
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