診療支援
治療

【2】肺高血圧症―肺動脈性肺高血圧症,左心系疾患に伴う肺高血圧症,肺疾患あるいは低酸素血症に続発する肺高血圧症
pulmonary hypertension(PH)
巽 浩一郎
(千葉大学特任教授・呼吸器内科)

疾患を疑うポイント

●呼吸機能障害では説明できない労作時呼吸困難・失神,および/または右室不全の徴候を示す患者では,PAHの存在(併存)を疑う.

学びのポイント

●PAHは肺血管の閉塞・狭窄により肺動脈血管抵抗が上昇する病気であるので,必ず右心室に負担がかかる.右心室の壁が厚くなり,右心室の大きさが拡大し,右心室の機能が低下するため十分な血液が送り出せなくなる.PAHの症状は右心不全の症状であり,右心不全により死亡する.

●肺高血圧症に合併する病気として,膠原病,先天性心疾患,肝臓疾患(門脈圧亢進症)などが挙げられる.PAHと類似している病態が,左心不全,慢性肺疾患(慢性閉塞性肺疾患,特発性間質性肺炎など),慢性肺血栓塞栓症などで起こることがあり,それらの病気が合併することもある.

▼PHの臨床分類

 PHは肺血管構造の改築を基盤とする疾患群であり,肺動脈圧の上昇を認める病態の総称である.肺動脈圧上昇の原因はさまざまである.PHは右心カテーテル検査(right heart catheterization:RHC)で肺動脈圧の上昇を確認するだけでなく,その臨床病型の診断が必要である.分類されたそれぞれの病型で,同じPHの程度でも病態が異なり,治療戦略,治療反応性,予後が異なる.そのための臨床分類である(表2-34)

 肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)は特発性,遺伝性,続発性,さらに亜型として肺静脈閉塞症(pulmonary veno-occlusive disease:PVOD)/肺毛細血管腫症(pulmonary capillary hemangiomatosis:PCH)を伴うPAHなどに分類される.続発性PAHには,結合組織病,門脈肺高血圧症,先天性心疾患などがある.遺伝性PAHの遺伝子変異としてはBMPR2ACVRL

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?