診療支援
治療

【1】急性呼吸不全
acute respiratory failure(ARF)
石原 英樹
(八尾徳洲会総合病院・副院長(呼吸器内科))

▼定義

 呼吸不全は「原因疾患を問わず動脈血液ガス(特にPaO2とPaCO2)が異常値を示し,そのために生体が正常な機能を営みえない状態」と定義される.具体的な診断基準を表2-42に示す.

 急性とは臨床経過が数時間から1か月未満で呼吸不全に至るものを指すのが一般的である.急性呼吸不全は,正常な呼吸機能を有するものに発症し,多くは日の単位で進行する狭義の急性呼吸不全と,慢性呼吸器疾患症例に急速な症状,所見の悪化が生じて呼吸不全に陥る急性増悪とに分けられる.

▼原因疾患

 急性呼吸不全は動脈血液ガスと臨床経過から定義される病態で,原因となる疾患が必ず存在する(表2-43)急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)は急性呼吸不全の代表的病態であり,狭義の急性呼吸不全と同義語のように用いられることもある.ARDS自体が臨床症候群であり,敗

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