咳や呼吸困難などの自覚症状を主訴として医療機関を受診する場合と,症状に乏しく検診で異常陰影を指摘され医療機関を紹介受診する場合とがある.胸部X線で異常を認める場合は胸腹部CT,喀痰細胞診検査を行う.また,腫瘍マーカーも測定する.CTで異常が確認された場合は,①気管支鏡,②CTあるいは超音波下の腫瘍生検,③胸腔鏡下腫瘍生検のいずれかで確定診断をつける.その後の病期診断は,最近では全身のPET/CT,造影頭部MRIを行い,前項のTNM分類(表2-49図)を用いて臨床病期(c-ステージ)を決定する(表2-50図).なお,治療を行う前の画像を用いて判定をした病期を臨床病期という.臨床病期を決定したのち,患者の全身状態(performance status:PS)(表2-51図),年齢,心血管病変,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)や間質性肺炎などの併存症を勘案し治療方針を決定する.PS不良,高齢,重篤な併存症により病期に応じた標準的治療が困難で,支持療法を選択しなければならない症例も多い.
肺癌の標準的治療は非小細胞肺癌と小細胞肺癌により大きく異なる.臨床病期ごとの肺癌治療方針を図2-68図に示す.非小細胞肺癌のⅠA期,ⅠB期,ⅡA期,ⅡB期,ⅢA期の一部は手術療法が標準的治療である.超高齢者,併存症を有する症例は,この病期であっても手術が困難な場合があり,N0であれば高精度放射線治療などの放射線治療を選択する.また,保険適応ではないが,時に陽子線,重粒子線治療を行うことがある.Ⅲ期では縦隔リンパ節の単発転移などの場合は手術を施行するが,手術不能の場合は化学療法と1日1回の放射線療法の同時併用療法を行う.なお,Ⅳ期の進行非小細胞肺癌症例は薬物療法が選択される.薬剤を選択するうえで重要な因子は,①組織型,②epi
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