診療支援
治療

胸水
pleural effusion
瀬山 邦明
(順天堂大学大学院先任准教授・呼吸器内科学)

疾患を疑うポイント

●胸部X線正面像で肋骨横隔膜角(costophrenic angle:CP angle)の鈍化.

●側面像で肋骨脊柱角(costovertebral angle:CV angle)の鈍化.

●貯留量が多ければメニスカスサイン(meniscus sign).

学びのポイント

●生理的量を超える胸水の存在は,胸腔での病的プロセスの存在を示唆する.

●基礎疾患診断の契機となる.

●Lightの基準に従って漏出性あるいは滲出性胸水を鑑別することが重要である.

▼定義

 胸水は,胸腔に存在する液体で,約10~20mL前後(おおよそ0.26mL/kg体重)存在している.胸水の存在は呼吸に伴う肺と胸壁の滑らかな滑走を支える潤滑油の役割を果たしている.正常状態では,胸部X線では胸水の存在は確認できないが,何らかの病的プロセスにより増量すると認識できるようになる.

▼胸水の産生と吸収の病態生理

 生理的状態では,胸水は壁側胸膜の毛細血管から産生され,壁側胸膜のリンパ系から吸収される.胸水の産生は,毛細血管と胸腔との静水圧較差膠質浸透圧較差のバランスにより規定されている(図2-76).生理的状態での胸水は,蛋白濃度が低いことを除けば基本的組成は血清と類似している.したがって,膠質浸透圧は毛細血管内のそれより低く,また,胸腔内圧は陰圧であるため(重力や肺のひずみの影響で肺尖部と肺底部で約7cmH2Oの差がある),壁側胸膜を介した胸腔への水分の動きが生じる.一方,臓側胸膜の毛細血管の静水圧は,壁側胸膜のそれよりも約6cmH2O少ない.これは,臓側胸膜の毛細血管は肺静脈へ注ぐためである.これのみが,臓側と壁側で違う要素であり,この違いのため臓側胸膜を介した圧較差は0となるため臓側胸膜を介した正味の水の動きはないと考えられる.また,臓側胸膜は壁側胸膜より厚く,血流は壁側胸膜側に比べてより離れて分布し

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