診療支援
治療

動脈血ガス分析
平井 豊博
(京都大学大学院教授・呼吸器内科学)

●肺でのガス交換の状態を知るうえで重要な検査の1つであり,呼吸不全の診断,酸素療法の適応や投与法などを決める際に不可欠な検査である.

●動脈血の採血部位としては,橈骨動脈,上腕動脈,大腿動脈がよく用いられる.採血後すぐに血液ガス分析装置に検体を注入して,動脈血酸素分圧(PaO2),動脈血炭酸ガス分圧(PaCO2),pHが測定される.

●基準値はPaO2が80~97Torr,PaCO2が35~45Torr,pHが7.35~7.45である.

●PaCO2は,肺胞換気量と反比例するため,低換気で高くなり,過換気で低くなる.

◎A-aDO2(肺胞気動脈血酸素分圧較差)(図2-53)

●PaCO2が異なる(=肺胞換気量が異なる)血液ガス所見を比較する場合,PaO2は換気量によっても影響されるため,PaO2の絶対値のみを比較して肺での酸素化障害を評価することはできない.そこで,A-aDO2という指標が用いられる.

●室内気でのA-aDO2は,動脈血ガス結果から以下の式で計算される.

 A-aDO2=PAO2-PaO2≒150-PaCO2/0.8-PaO2

●この指標は,肺に異常のない肺胞低換気や,吸入気酸素濃度の低下(高地での呼吸など)では正常を示し,肺の異常と鑑別する1つの手段となる.

●A-aDO2が20Torrを超えると異常とされ,その原因としては,シャント,換気血流比の不均等,拡散障害がある.

◎パルスオキシメトリー

●酸素と結合したヘモグロビンと脱酸素ヘモグロビンとでは光の吸収の性質が異なることを利用して,経皮的に動脈血中の酸素飽和度(SpO2)を測定する方法である.

●採血を要せず,非侵襲的に,簡易に動脈血の酸素化を評価することができ,モニターとして連続測定も可能であり,日常診療で広く用いられている.

●健常者のSpO2は,およそ96~99%である.呼吸不全の目安となるPaO2 60Torrは,S

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