診療支援
治療

3 心室細動
ventricular fibrillation(VF)
清水 渉
(日本医科大学大学院大学院教授・循環器内科学)

▼定義

 心電図上は,形,振幅,持続時間が全くばらばらな心室波が連続し,QRS波,ST部分,T波を区別することが不可能な波形を呈する致死性不整脈(図3-33)

▼病態

 VF時には,電気的な心室興奮はあるが,心室はただ震えているだけ(細動状態)で,血行動態的にはポンプ機能は失われる.このため全身への血液の駆出はなくなり,数秒で脳循環不全によるAdams-Stokes(アダムス-ストークス)発作(眼球上転,全身けいれん,意識消失)を生じ,3~4分以上持続すれば急速に不可逆的な脳障害が進行すると同時に救命率も低下する.通常,1分経過するごとに救命率は10%ずつ低下するとされており,心臓マッサージなどの救急措置が施行されず10分以上経過すれば高度な脳障害を残すか致死性となる可能性が高い.

▼疫学

 VFは死亡に直結する終末不整脈であるため,その頻度は不明である.

▼分類

 Wiggers CJらによれば,VFは,①波状期(undulatory stage),②けいれん性不等期(stage of convulsive incoordination),③振戦性不等期(stage of tremulous incoordination),④無緊張性不等期(stage of atonic incoordination)の4期に分類される.①はVF開始1~2秒後にみられるVT様の波形を呈する時期であり,異なる局所から連続的に収縮波が広がるが,心筋の協調運動は保たれている.②はその後15~40秒持続する頻回(平均周期0.09~0.12秒)で無秩序な波形がみられる時期で,心筋の協調運動は失われる.③は収縮波の分裂が頻繁に生じ,さらに細かい振戦様の収縮を認める時期で,2~3分持続する.④は最終期であり,心筋の虚血性変化により電位波形は幅広で緩徐となり,心筋の収縮運動が完全に消失し,心停止に至る.

▼診断

 意

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