診療支援
治療

1 心房中隔欠損症
atrial septal defect(ASD)
八尾 厚史
(東京大学講師・保健・健康推進本部)

疾患を疑うポイント

●成人期まで無症状のことも多く,何らかのきっかけで心エコーにて肺(右)心房・肺(右)心室の拡大を見た場合には鑑別に挙げる.

学びのポイント

●小児期の修復術の適応は,将来的な右心不全・肺高血圧の発症リスクの目安となる肺・体血流比(Qp/Qs)などにより決定する.一方,成人期ではすでに生じている障害をも考慮し修復術の決定を行う.

▼定義

 心房中隔は発生段階で一次中隔(左房側)と二次中隔(右房側)の2枚により形成されるが,その形成不全により心房中隔欠損を生じる.

 卵円孔は胎生期に必要であるが,出生後に肺循環が機能すると左房圧上昇から卵円孔弁が右室へ押しつけられて閉じるとされている.しかしうまく閉じないことも珍しくなく,これを卵円孔開存(patent foramen ovale)として,心房中隔欠損と区別される.

▼病態

 心房レベルでの短絡を生じ,欠損孔の大きさにより短絡量および障害の程度が決まる.左室に比べ右室のコンプライアンスは大きいため,拡張期には欠損孔を介して右房・右室に血液が流れ左右シャントを生じ,肺血流量(Qp)が体血流量(Qs)より多くなる.シャント方向を決めている最も重要な因子は両心室のコンプライアンスであることを忘れてはならない.多量の左右シャントは,右心系の拡大から右心不全や上室性不整脈,肺動脈内皮障害から肺高血圧の原因となる.その他,逆シャントによる奇異性塞栓・低酸素血症による運動耐容能低下・起立性(体位性)低酸素発作(platypnea-orthodeoxia)にも注意が必要である.

▼疫学

 無症状で経過する症例も多いため正確な数字は存在しないが,先天性心疾患のなかでは,先天性大動脈二尖弁,心室中隔欠損とならぶ最も発生頻度が多い疾患の1つである.

▼分類

 欠損孔の部位により,二次孔欠損型,一次孔欠損型(房室中隔欠損不完全型と同義),静脈洞型(上静脈洞

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