診療支援
治療

3 房室中隔欠損症,心内膜床欠損症
atrioventricular septal defect(AVSD)/endocardial cushion defect(ECD)
八尾 厚史
(東京大学講師・保健・健康推進本部)

疾患を疑うポイント

●完全型の場合,出生から幼児期までにチアノーゼ・心雑音から心エコーに至り診断される.不完全型は,心房中隔欠損に類似する.

学びのポイント

●心臓の形態のみならず臨床経過も完全型と不完全型では大きく異なるので,その病態の違いを理解する.形態的な重要な共通点は,両側の房室弁の位置にずれがないこと(同一平面)である.

▼定義

 房室弁に隣接する房室中隔組織の欠損に房室弁異常を合併する疾患で,心房一次中隔と心内膜床の癒合,膜性心室中隔(心室中隔流入部)の形成,房室弁形成の過程で異常を生じ,心房中隔欠損・房室弁形成異常・心室中隔(流入部)欠損(scooping)を生じ,病型が形成される.大きく完全型(図3-87)と不完全型に分類される.また,心室中隔流入部欠損の程度により房室結節・His(ヒス)束が後下方へ偏位する.房室中隔組織が胎生期の心内膜床に由来するため心内膜床欠損症ともよばれる.心室低形成,左室流出路狭窄の合併もみられることがあり,病態を修飾する.

▼病態

 完全型は,心房・心室中隔欠損と房室弁逆流により,両心室に容量負荷を生じ,高肺血流による肺高血圧心不全が早期に急速に進む.一方,不完全型は,心房中隔欠損と左側房室弁逆流を合併するが肺高血圧および心不全の発症は緩徐で,おおむね心房中隔欠損症の病態と近似できる.

▼疫学

 全先天性心疾患の約4~5%を占め,本疾患の30~40%はDown(ダウン)症候群に合併した完全型である.また,内臓心房錯位症においての合併も多くみられる.

▼分類

 欠損孔および房室弁の形態により,基本的には完全型(図3-87)と不完全型に分類される.

完全型

 房室弁孔の分離がされず,5つの弁尖(前上尖,共通前尖,右下尖,左側尖,共通後尖)からなる共通房室弁(common atrioventricular valve)を有し,大きな心室中隔欠損を合併する

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