▼定義
機能的心室が1つしかない先天性心疾患で,2つの房室弁もしくは共通房室弁を介して,心房血が唯一の機能的心室に流入する(図3-106図a).
▼病態
病態は肺動脈狭窄の有無により決定する.肺動脈狭窄がない症例では高肺血流による心不全が主体となり,狭窄が高度な症例では低肺血流によるチアノーゼが主体となる.内臓心房錯位,特に右側相同では高率に房室弁閉鎖不全や総肺静脈還流異常を合併し,予後不良因子となる.
▼分類
左室型単心室,右室型単心室.
▼疫学
先天性心疾患の約1~2%を占める.
▼診断
➊臨床症状
肺血流量が多い症例は乳児期早期から多呼吸,哺乳力低下,体重増加不良などの心不全症状が目立つ.一方で肺血流の少ない症例では,チアノーゼが主症状となる.
➋検査所見
1)胸部X線
肺血流増加例では心拡大と肺うっ血がみられる.
2)心電図
右室型では右室肥大,左室型では左室肥大所見がみられる.
3)断層心エコー
主心室と痕跡的心室の位置関係(本来左心室は後方かつ下方,右心室は前方かつ上方に位置する),房室弁や乳頭筋や肉柱の形態から右室型か左室型かを診断する.
4)心臓カテーテルおよび造影
Glenn(グレン)手術やFontan(フォンタン)手術前に,肺動脈圧(平均20mmHg以下),肺血管抵抗値(3単位・m2以下),心室駆出率(40%以上),肺動脈形態の評価を行い,適応を判断する.
5)マルチスライスCT
手術に必要な大血管の空間的位置関係を診断する.
▼治療
➊内科的治療
病態に応じて,利尿薬,末梢血管拡張薬,肺血管拡張薬を投与する.
➋外科的治療
1)第1期治療(図3-106図b)
新生児期にBlalock-Taussig(ブラロック-タウシッヒ)短絡手術もしくは肺動脈絞扼術を行う.
2)第2期治療(図3-106図c)
乳児期中期に上大静脈を肺動脈に吻合する〔両方向性Glenn(グレン)手術〕.
3)第3期