▼定義
右心室より大動脈が,左心室より肺動脈が起始する疾患.
▼病態
円錐動脈幹隆起の発育異常により,動脈幹のらせん状分割が正常に行われないために発症する.心室中隔欠損,肺動脈狭窄の有無によりⅠ~Ⅲ型に分類される(図3-96図a~c).出生直後からチアノーゼがみられる代表的疾患.
▼疫学
先天性心疾患の2.2%を占める.2:1で男児に多い.
▼分類
➊Ⅰ型(約45%)
心室中隔欠損を伴わないタイプ(図3-96図a).
➋Ⅱ型(約40%)
心室中隔欠損を合併するタイプ(図3-96図b).
➌Ⅲ型(約15%)
心室中隔欠損に肺動脈狭窄を伴うタイプ(図3-96図c).
▼診断
➊症状
1)Ⅰ型
出生直後より著しいチアノーゼを呈する.生存には,卵円孔を介した左-右短絡,動脈管を介した右-左短絡の両者が必要である.
2)Ⅱ型
肺血流は多く,出生直後にはチアノーゼは目立たない.生後1週間以降,多呼吸,体重増加不良など,心不全および肺うっ血の症状を呈する.
3)Ⅲ型
肺動脈弁狭窄および弁下狭窄が高度の場合はチアノーゼが強い.
➋理学的所見
聴診では,Ⅱ型では肺血流の増加に伴う機能的肺動脈狭窄音とⅡ音の亢進が聴取される.Ⅲ型では肺動脈狭窄音が聞かれる.
➌検査所見
1)胸部X線
両大血管は前後に並列するので,左Ⅰ,Ⅱ弓,右Ⅰ弓が陥凹し,「卵型」の心陰影となる.Ⅱ型では心拡大と肺血管陰影の増強が,Ⅲ型では心拡大は目立たず肺血管陰影は減弱する.
2)心電図
右軸偏位,右室肥大がみられる.
3)断層心エコー
両大血管は交叉せずに前後に並列し,右心室から起始する前方大血管は大きなアーチを描き大動脈となり,左心室から起始する後方大血管は背側に向かい左右肺動脈に分枝する.
▼治療
➊Ⅰ型
診断がつき次第プロスタグランジンE1の持続静注を行い,動脈管を開存維持させる.卵円孔が小さく動脈血酸素飽和度が低い症例では,バルーンカテーテルによる心
関連リンク
- 新臨床内科学 第10版/ジャテネ手術
- 新臨床内科学 第10版/ラステリ手術
- 新臨床内科学 第10版/1 心房中隔欠損症
- 新臨床内科学 第10版/2 心室中隔欠損症
- 新臨床内科学 第10版/1 肺動脈閉鎖兼正常心室中隔(純型肺動脈閉鎖症)
- 新臨床内科学 第10版/2 ファロー四徴症
- 新臨床内科学 第10版/3 三尖弁閉鎖症
- 新臨床内科学 第10版/総肺静脈還流異常,部分肺静脈還流異常
- 新臨床内科学 第10版/単心室
- 新臨床内科学 第10版/4 両大血管右室起始
- 新臨床内科学 第10版/3 修正大血管転位
- 新臨床内科学 第10版/6 大動脈縮窄,大動脈離断
- 新臨床内科学 第10版/11 冠動脈起始異常