▼定義
胎生期に僧帽弁,大動脈弁,もしくは両者が閉鎖したために,左心室および上行大動脈の発育が著しく障害された症候群.最も予後不良な先天性心疾患の1つ(図3-101図).
▼病態
右心室は唯一の機能的心室であり,肺動脈より出た血液は左右の肺と動脈管から全身へと駆出される.体血流は動脈管に依存する.
▼疫学
発症は先天性心疾患の約1%とされている.
▼診断
➊臨床症状
生後間もなくチアノーゼ,心雑音で気づかれる.動脈管が閉鎖すると,体血流が維持できず,急速にアシドーシスから死に至る.動脈管が維持された場合,生後1週間を超えて肺血管抵抗が下がると,肺へ大量の血流が流入し,呼吸不全,心不全,無尿,ショックに陥る.
➋検査所見
1)胸部X線
心拡大と肺血管陰影の増強が経過とともに進行する.
2)心電図
右軸偏位,右室肥大,左室成分の減少(V1のR波減高)がみられる.
3)心エコー
大きな右心室,痕跡的な左心室,細い大動脈,閉鎖した僧帽弁および大動脈弁,動脈管を介しての肺動脈から下行大動脈への血流で診断する.
4)マルチスライスCT
大動脈,動脈管,肺動脈の3次元的位置関係を確認する.
▼治療
➊内科的治療
診断がつき次第プロスタグランジンE1製剤を持続点滴し動脈管を開存させる.チアノーゼを理由に安易に酸素吸入を行うと,動脈血の酸素分圧が上昇して動脈管を閉鎖させ,ductal shockを誘発する.左心低形成では,酸素吸入は禁忌である.
➋外科的治療
十分な体血流と適度な肺血流を維持するために,新生児期には,低形成の大動脈と太い肺動脈を束ねて新しい大動脈を作成するとともに,Blalock-Taussig(ブラロック-タウシッヒ)短絡手術〔特論(→)を参照〕もしくは右心室-肺動脈シャント術により適度な肺血流を維持するNorwood(ノーウッド)手術が行われる.その後乳児期のGlenn(グレン)手術を経て,幼児
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