診療支援
治療

1 上大静脈症候群
superior vena cava syndrome
荻原 義人
(三重大学医学部附属病院・循環器内科)
伊藤 正明
(三重大学大学院教授・循環器・腎臓内科学)

▼定義

 上大静脈(superior vena cava:SVC)に閉塞または高度狭窄をきたすことにより,頭頸部,胸部および上肢に静脈のうっ滞症状を呈する症候群.

▼病態

 SVCの閉塞や狭窄,または血栓により,静脈還流が障害され静脈圧が亢進する.その結果,閉塞部位より末梢側に浮腫,静脈拡張を呈するようになる.また右房への静脈還流を促すように,奇静脈系,内胸静脈,外側胸静脈,椎骨静脈,食道静脈系を介した側副路の発達が認められる.

▼疫学

‍ 原因としては悪性疾患が大部分を占めているが,近年,良性疾患に伴うものが増加しており,全体の20~40%まで占めるようになっている.

悪性疾患

 リンパ節腫脹など外部組織からの圧迫や悪性疾患の浸潤によってSVCに閉塞や狭窄をきたす.胸腔内で発生する腫瘍が最多であり,組織別には非小細胞肺癌,小細胞肺癌,非Hodgkin(ホジキン)リンパ腫の順で多い.

良性疾患

 カテーテルやペースメーカなど血管内留置デバイスの使用増加に伴い,カテーテル関連血栓症によるものが増加している.その他の原因には,ヒストプラスマ症(histoplasmosis),結核などの線維性縦隔炎,放射線治療に伴う線維症などがある.

▼診断

 特徴的な症状から診断は容易なことが多い.画像診断により確定する.

症状

 呼吸困難感の訴えが最も多い.他覚所見としては,顔面や頸部の浮腫を認めることが最も多く,本症を疑うきっかけとなる.浮腫は前かがみや,臥位になった際,悪化を認める.頸部や前胸部の静脈拡張所見もみられることが多い.まれに脳浮腫を発症し,頭痛,意識障害を認めることがあるが,喉頭浮腫による呼吸困難症状とともに緊急のサインであり,早急な処置を行わないと,昏睡,死に至ることもある.

画像診断

1)造影CT

 最も有用な検査方法であり,SVC狭窄の部位・程度を確認すると同時に,側副路の存在も確認する.さら

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