診療支援
治療

心臓腫瘍
河野 浩章
(長崎大学大学院准教授・循環器内科学)
前村 浩二
(長崎大学大学院教授・循環器内科学)

疾患を疑うポイント

●小児から高齢者のいずれの年齢でも発症する.

●閉塞性心症状,塞栓による症状,発熱などの全身症状から診断されることもある.

●心エコーなどの画像診断が有用.

学びのポイント

●原発性心臓腫瘍では,良性は粘液腫が最も多く,悪性は肉腫が最も多い.

●粘液腫は左房に多く,血管肉腫は右房に多い.

●診断には,まず心エコーが有効.

●治療は良性の場合は外科切除術であるが,悪性の場合は,外科切除術が不可能であることが多く,放射線療法や化学療法を行うが一般的には予後不良.

●転移性心臓腫瘍では,心膜への転移が一番多く,原発は肺癌が最も多い.

●悪性黒色腫は高頻度に心臓に転移する.

▼定義・病態・疫学・分類

 心臓腫瘍(cardiac tumor)は,原発性(primary)と続発性(転移性)〔secondary(metastatic)〕に分類されるが,原発性心臓腫瘍は,あらゆる年齢層でまれであり,その頻度は,剖検例の0.001~0.03%と報告されている.一方,続発性(転移性)心臓腫瘍は多く,原発性心臓腫瘍の20~40倍の頻度である(表3-57)

 原発性心臓腫瘍は,心筋や心内膜に生じるが,弁,結合組織や心膜から発生することもある.さらに,良性(benign)と悪性(malignant)に分類され,すべての原発性心臓腫瘍の約75%が良性腫瘍(benign tumor)であり,そのうち少なくとも半分が粘液腫(myxoma)で,脂肪腫(lipoma),乳頭状線維弾性腫(papillary fibroelastoma),横紋筋腫(rhabdomyoma),線維腫(fibroma),血管腫(hemangioma)の順に多い.しかし,良性とはいうものの,どのような良性の原発性心臓腫瘍であっても悲惨な結果をもたらす可能性がある.すなわち,原発性心臓腫瘍は,たとえ良性であっても,その解剖学的位置のために

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