▼定義・病態・疫学・分類
頻度は,剖検例で1.7~14%(平均7.1%),一般住民で0.7~3.5%(平均2.3%)と報告されている.転移性心臓腫瘍の頻度は以前の報告より増加しつつあるが,主に画像診断の進歩によると思われる.心臓への転移様式は,直接浸潤,血行性およびリンパ行性転移や下大静脈からの心内腔への進展による.心膜転移が最も多く,心筋,心内膜の順となる.心膜転移は,乳癌や肺癌を含む胸部癌の直接浸潤が多い.腹部および骨盤内腫瘍も,下大静脈から右房に到達しうる.原腫瘍の頻度はまれであるが心臓へ高頻度に転移するのが悪性黒色腫である.原発巣は,全体としては肺癌が最も多く,ついで乳癌,造血器腫瘍の順である.男性では,肺癌の次に食道癌とリンパ腫が多いが,女性はリンパ腫,乳癌と続く.症状は,腫瘍の部位によりさまざまであり,呼吸困難,動悸,意識消失,胸痛,浮腫などを生じる.心タンポナーデの頻度は高く